Downfall The Daylights pt.6
畜生作者が送る極悪ダークファンタジーラノベです
「ところがやっと将軍まで上り詰めてこれからってところで使い捨てにされてこのザマですよ……」もはやジュニヤは完全に怒りにまかせて話している。
「永遠に殺されないならそれまでの話。斬って斬りまくって僕を辱めた奴らを皆殺しにする。そのためにもあの剣が欲しい!」ジュニヤに与えられた屈辱は相当なまでのものだったらしい。
アダールは自分よりひどい目に合わされた者が王族にいるとは思いもしなかった。
ハジも動揺を隠せない。自分たちが剣を奪われたことで完全に王国は狂ってしまったのか?そう考えてほぼ間違いない。自分を責めるしかないハジである。
ヴァンパイア卿も困惑している。たった二人の話を聞いただけで恐怖と狂気が支配する地獄の王国と戦わなければならないと言うのか……そしてこの事実をどう君主に上げればいいのか正直頭が痛い。
「……狂ってやがる」500年前からこの地に束縛されていたハジの部下がアダールとジュニヤを見てつぶやく。
その後数時間、ジュニヤとアダールの王国百物語が展開される。これほどまでにヴァンパイア公国の夜が恐ろしかったことはかつてない。
その後数時間、棺桶にこもって瞑想していたヴァンパイア卿だが、悪夢にうなされ生命力を逆に失うことになってしまう。
ヴァンパイア卿は早速君主に使いを送り、自分たちヴァンパイア以上の闇を抱えた生物である二人の処遇をどうすべきか回答を待つことにした。
君主への使いが往来する間、百物語で打ち解けたアダールとジュニヤはハジの案内無しで狩りに行き、そこで狼やら吸血コウモリと言ったヴァンパイア公国古来生物ジビエ食べつくしハイキングを楽しんで帰ってきた。
兵士用の粗末な鎧と兵士用の粗末な弓などを持って出たのだが、帰ってきたときにはその鎧が真紅の血に染まっていた。
「少し髪の色が金色になってきた……」ジュニヤの髪を見てアダールが気づく。
「そっちこそ若干茶色ががっていたのに今では漆黒に戻ってる」ジュニヤもアダールの髪の色の変化に気づいた。
「あれだけ狩りを楽しんだ挙げ句、ほどんど生焼けで食べてたし……」アダールが狩りの印象を語る。
「久々になんか、スッキリしたけど闇の中でも目が見えてたのってやっぱり闇の束縛のせいかな?」ジュニヤが変化に気がついた。
「かも知れないが、どうでもいい。どうせ俺たち王国に帰るつもりなんてないわけだし、しばらくゆっくり休みたい」アダールが本音を口にする。
二人とも軍に入ってからはほとんど休みなく殺戮と略奪に明け暮れていたのだから疲れていて当然であるが、それに気づかぬほど王国の恐怖が上回っていた。
その恐怖から開放されたことで疲れが一気に出たというところだ。
無論、生命力をヴァンパイア卿に抜かれたことも若干の疲労の要因にはなっている。実際に二人共瀕死の状態で逃げ回って即死をなんとか免れた身である。
闇が生命力を満たすまでまだ長くかかりそうだと二人で顔を合わせて笑った。
一気に闇の世界の魅力に取り憑かれ、その世界を楽しむ二人の影でヴァンパイア卿の伝令からの王国の現実を知らされたヴァンパイア王は配下のヴァンパイア卿を全招集することに決めた。
無論王国の最新の情報を知りうるかの二人とハジもまたヴァンパイア王の呼び出しを受けた。無論、帝国スタイルの優雅な食事付きと聞けば闇グルメに心血を注いでいる二人は大喜びだ。
二人の部下の兵士たちもまた狩猟を訓練がてらに行っているのだがこれがまた楽しくて仕方がないらしい。王国で狩りをすれば御用地だ所領だと何かにトラブルがつきまとう。釣り糸を垂らして魚を釣ってもである。
と、いうわけでヴァンパイア卿が一同に会し、三人の闇に束縛されし人間が同席する前代未聞の会食会が始まった。
「ここで出会ったのも何かの縁というべきか?」ヴァンパイアの王がアダールとジュニヤに話しかけた。
「多分闇の力が引き寄せたのだと思います」アダールが笑みを浮かべて答えた。アダールは蝋燭の炎に照らされたヴァンパイア王の顔が真っ白で血の気を欠いているのを見逃さなかった。
「本当なら王国兵の血で盃を傾けようと思うのだが獣の血で今日も我慢するとしよう」ヴァンパイア王が盃をあげるとヴァンパイア卿がそれに続く。無論、アダールたちにも1050年物の赤ワインが振る舞われた。
「1050年前から寝かしてあるだけあってなかなかいい一品をいただきました」さすがは王族だけあって、ジュニヤは舌が肥えている。
(俺には普通の赤ワインに感じるのだが、育ちの悪さが出てるだけ?)アダールは家柄の格を見せつけられつつ帝国風料理に舌鼓を打っている。
「その地獄の軍隊と知らず不用意な人数で迎え撃ってきた我々の無知が情けない」ヴァンパイアの王が語る。
「今は農民と狩人に軍事訓練を施しただけの民兵か、武器の訓練だけをさせ、盾すら持たない徴募兵部隊が王国の主力ですから心配なさらずに結構です」アダールが王国の内実を暴露する。
「職業軍人は海兵だけか?」ヴァンパイアの王が尋ねる。
「きちんと訓練を積んで盾を扱える職業軍人が王都から出ることはここ100年以上はないことです」アダールが答えた。
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