Downfall The Daylights pt.7

畜生作者による極悪ダークファンタジーラノベの続きです。

「ただし500年前には存在しなかった最も凶暴な軍団が新たに結成されています。彼らと戦うのは相当手こずるかと思います」アダールが付け加えた。

「それが噂に聞く武装巡礼団か?アダール卿の家族と父上の領民全てを虐殺したという部隊だな」ヴァンパイアの王が尋ねる。ヴァンパイア卿からの報告がすでに上がっているようだ。

「武装巡礼団のメンバーは虐殺の後に残された孤児からなっています。殺しの技が優れていれば高位に上がる希望が残されているため日々技の鍛錬に勤しんでいます」アダールが武装巡礼団の生活について語る。

「アダール卿は武装巡礼団から海兵に移ったと聞いている」ヴァンパイア卿の報告書に目を通した王がアダールに尋ねた。

「15歳までは武装巡礼団で技を磨いてからは海兵での訓練に移りました。武装巡礼団の頂点が自分の仇敵である聖騎士だからです」アダールが海兵団に移った理由を説明する。

「500年前には無かったのか?ハジ殿……」ヴァンパイア王がハジに尋ねる。

「徴募兵は存在しましたが民兵と武装巡礼団については500年前の王国には存在しなかった組織です」ハジが答える。

「それについては詳しく知っています。王族ですから……」どうやらジュニヤはなにか王国の変化の理由を知っているらしい。

「王族なので一応は国の歴史については一通り書物を読んでおきました。無論、あの遊び人と王后を葬り去った後の帝王学としての嗜みです」ジュニヤが顔色一つ変えず言った。

(本気で王と王后を暗殺するつもりらしい……まあ、協力なら惜しまないが……)アダールが聞いていて顔を覆う。とことんジュニヤの闇は底が見えないほど深い。

「500年前に王国を築いた魔剣を失ったと聞いて全て納得することができました。魔剣を失った王国は、魔剣に代わる攻撃力を補うために王に盲従する虐殺部隊の武装巡礼団を組織した」ジュニヤが武装巡礼団の発足の理由を暴露する。

「武装巡礼団のメンバーは魔剣と違い、戦死してしまえば使い捨てるしかない。こうして新たな武器を求めて武装巡礼団による孤児創出とその孤児を恐怖の武器として訓練する仕組みが出来上がったというのが真相では?」ジュニヤが恐ろしい意見を述べる。

ジュニヤが事実を話しているのならば全ての辻褄があってしまう。更に王国の領土の拡大が停止したのも500年前のことであり、その時から王国の人口は過剰気味に常にある。

「つまり余剰人口の縮小と従順なる殺人機械を創出する仕組みが構築されたということか……」アダールが変に納得する。

「むろん、虐殺するには理由が必要になってくる。そこで彼らを民兵として辺境軍の主力に据えた」ジュニヤが更に王国の真実を語り続ける。

「戦いに負ければ民兵は戦死し、思惑通りに人口が減る。勝っても報酬は全くもらえず、更に納税義務が残される。だから農民反乱が絶えないのが今の王国というところです」ジュニヤの言葉が衝撃を与えた。

「勝っても負けても結局待っているのは死という仕組みか……」ヴァンパイア王が呆れた顔をする。

「だから民兵は精一杯戦うが将軍という監視役が戦死すればすぐに散り散りに王国領外への脱出をはかり、中には野盗化するものさえもが現れる」ジュニヤは王族だけあって、12歳までは相当まともな教育を受けていたようだ。

「前線の城の暗黒騎士から伝令です。留守部隊の宮廷魔術師二名とヴァンパイア卿の守備隊が王国軍二部隊と交戦とのこと」暗黒騎士が枯れた声で王に伝える。どうやら暗黒騎士もまた、劣化していく亡者らしい。

「で、彼我の損害はいかに?」ヴァンパイア王が尋ねる。

「敵将一人はヴァンパイア卿が殺害、もうひとりは逃走中に捕虜として捕獲。他多数の捕虜を捕獲も我が軍の亡者部隊も壊滅しました」暗黒騎士が告げた。

「そろそろ我が軍の亡者も劣化してきたということか……」ヴァンパイア王が嘆く。

「提案があります。捕虜を亡者にしてみては?」宮廷に使える死霊魔術師が進言する。

「確かに悪くはない提案だ。ただ、民兵については国に返すわけには行くまいか?」ヴァンパイア王が思案する。

「自分の立場で口にだすのも不遜だとは思います。でも彼らは帰国しても武装巡礼団によって苦痛の末に殺害される。どうせ死ぬなら苦痛の少ない方でお願いします」アダールが言った。

「ならば我々の真骨頂だ。では苦痛のない死を見たいか人間よ……」死霊魔術師がアダールたちを処刑に立ち会わせようとする。

「更に付け加えるなら双方ともに武人としての心得を欠いている。彼らに闇の束縛という運命を果たして苦悩なくして受け入れられるかさえ疑問です」アダールが更に処刑を進言する。

「確かに的を得ていると思います。一般人が半死半生にされてもおそらく発狂するだけだから、いっそ魂も抜いてしまえばさらに苦痛を減らせるのでは?」ジュニヤもこれに合意する。

ハジは王国の現実を知らないだけに沈黙するしか無いようだ。

「捕虜全員を亡者として我軍列に加えよ。捕虜の将軍はヴァンパイア卿にくれてやれ。将来の指揮官としてヴァンパイア卿の列に加えておこう」ヴァンパイア王が決断した。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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