Downfall The Daylights pt.13

畜生作者「タコ・ライス」による極悪ダークファンタジーラノベです

「さあ、ハーレムの在処を白状してもらおうか?嘘をついて自分が囚われたらここで餓死確定だから正直に話せ」もはや相手に敬語など使っていない。

「……悪魔め!」教官が悪態をつく。

「全部話し終わってから顎骨を粉砕してやってもいいのだが?」ザトが怒りと軽蔑の混じった目で教官を見つめる。

(こいつ……本気だ……)教官の顔が恐怖で引きつる。

「……礼拝堂の下の広間だ。そこで彼らを飼育している。彼らも楽しんでいるんだからそっとしてやれ、な?」教官が含み笑いを浮かべて言った。

次の瞬間、ザトの脛蹴りが教官の顎を粉砕した。魔術師ギルドで復元するのに3ヶ月かかる重傷だったという。

「余計なことを……」ザトは部屋から少し離れてから気を一旦落ち着かせて礼拝堂の地下へと向かった。ルートは読み書きの習熟が予想外に早かったザトだけにすでに修道院の地図は頭に入れてある。

月明かりの下にチラホラと光が見える。地下室の明かりだろう。10歳までに闇夜での戦闘技術はすでに習熟している。それでなければ雇われ騎士、つまり用心棒や密偵は務まらない。

念のために松明を手に入れる。できるだけ愛用の剣と同じ長さ、同じ握りの物を選ぶ。照明用ではなく武器として手にしているのだ。

足音を殺して階段を光の方向へ歩く。気づかれずに部屋の入り口までついた。

中を覗いた瞬間、自分自身、危うく自我を喪失するところだった。

そこではありとあらゆる悪徳の限りが尽くされていた。完全に肉欲に囚われた大人と子供が戯れ、疲れた者が虚ろな目で身体を横たえている。それでも飢えている者がその疲れきった者を弄ぶ。

「快楽という名の地上の地獄……いや、堕ちた天使の楽園か?」ザトは扇情されるどころか精神的に逆に冷ややかになった。

「さて、誰から闇討ちしようか?全員無防備だが……まずは最強教官の後頭部に一撃加えるとしよう。なに、足音立てようが気づきもしないだろう」ザトは松明を利き手の左で握り、右を自由にした。

左利きの戦士からの攻撃は避けにくいとされている。だからザトの家では両手が使えるように幼い時から育てている。ザトの場合生まれつきの利き手が左で右は後から使い始めたことから左のほうがパワーは強い。

ただ、左手で武器を持つというのは隊列を組んで戦うのには不向きである。あくまで単独戦闘に限られる。

ただし、その後出会ったパヴァロンの野良犬のメンバーはほとんどが両利きであり、左で弓、右で剣というスタイルを貫いている。主武器が左にあるというのは集団戦闘では珍しい。

「問題は左がどれだけ手加減できるかだな。実のところ致命傷になるかも……まあいい、やってみるか……」ザトは情欲の園に踏み込んだ。が、誰もが快楽に溺れているのか疲れているのか自分に気づかない。

あっさりと最初の犠牲者の後方に回り込んだザトは左に構えた松明をその頭に振り下ろした。一撃で相手は叫ぶ間もなく気絶した。

「死んだ?まあいい、次のターゲットはこいつ!」体格では遥かにまさるが機敏性皆無の教官が一通りの情事を終えて他人の戯れを見て楽しんでいる。懐に飛び込むザト。右手で口で塞ぎ左の松明で腹を突く。二人目が声もなく気絶する。

「ここで物陰に隠れて様子を見て攻略順を決める……」最初の教官が気絶しているのに気づいてパニック状態の楽園の暗闇からザトが作戦を立て直す。相変わらず猛者たちは自分の存在に気づいていない。

ただ一人、ザトの存在に気づいていてあえて無視していた者が居た。最初にうつろな目で見ていた少年、アダールである。まだ9歳の少年は2年もここで弄ばれ続けていた。

「誰か知らないが……このまま奴らを皆殺しにして欲しい……ならば自分の人生がここで尽きても……満足だから……」アダールはそう思ってやっと休息をとった。

その後のザトの作戦は完璧だった。闇を横切ろうとした無神経者は即座に闇の中で気絶させられた。一人、一人と減っていく敵は徐々に混乱し、最後は最下級生と倒された教官らを捨てて逃走した。

「逃げてんじゃねぇよ……」そうつぶやくと怯えた目で自分を見る最下級生たちの真ん中を突っ切って部屋へとザトは戻っていった。松明は途中で隠し部屋で半殺しにした教官を複雑な構造の階段を利用して中庭に出してその教官の傍らに火をつけて放置した。

翌日、楽園の存在が発覚し、修道院は大騒動に包まれる。しかも凄腕の教官数名が何者かに襲撃され一人は口も聞けないほどの重傷である。

報復を恐れた最下級生たちは最後にザトが楽園を地獄に変えて去っていったのだが、それを口にする勇気のある者は居なかった。

半殺しにされた教官は復職することなく、武装巡礼団の一兵士に降格され戦死したとされている。

その後、ザトは部屋の窓枠で屈伸したり机の足に足を挟んで腹筋運動を恐ろしい数こなすなどしていたが、誰も文句を言う者はいなかった。

結局ザトの卒業まで修道院は平和だった。ザトは相変わらず授業では手を抜いていて武術の名門出身の割には才能がないと評されていた。みごと卒業まで敵を欺いたのである。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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