Downfall The Daylights pt.23

萌え作者「ハン・ライス」の極悪ダークファンタジーラノベです。

「残りの敵を片付ける。敵の位置を知らせろ!」アダールが観測兵を叱咤する。

「敵中央の敵将とその護衛です。距離は山の稜線上!」観測兵が伝える。

「あそこだな……これで終わりだ!」猛烈な闇の力が山体の半分を爆破する。その直後アダールは気絶した。

「……大丈夫だ、疲れてるだけ。担架持ってきて」とっさにサトケンがアダールの胸に触れる。好きで男の胸に触れている訳ではない。

最初は手首で脈を取ろうと試みた。しかし脈が取れない。そういう時は心臓に近いところに触れて脈を取るのが応急処置の基本である。

しかも拷問しながら魔力を使わせるのだから気絶させるわけにはいかない。そこで脈を図りながらアダールを拷問していたのだ。安全な程度に……

こうして戦いは闇の帝王を拷問して力を利用するという前代未聞の作戦が成功してヴァンパイア王は遺体すら見つからない。

「まだ背中が痛い……」翌日もアダールの機嫌が悪い。

「治ってるはずだけど?」平気な顔をしてサトケンが語る。

「うるせぇあの拷問がどれほど痛かったか!思い出すだけでゾッとする!」アダールが相当怒っている。

「自分で力を制御できない以上、ああする他になかったわけだし、そもそも大軍を引き連れて逃げてきたのはそっちの方だ」至って正論で切り代えされる。

「まあ……最後はなんとなく力の使い方を身につけられた気もするし……」アダールが黙り込む。

「ところでなにか食べたいものある?用意できるものは用意する」サトケンとともにいたザトが尋ねる。

「ザトさん……お久しぶりです」アダールがますます気まずくなる。おそらく過去の若気の至りを全て洗いざらいあの拷問野郎に……

「とりあえず肉と酒……」アダールがボソリと口にする。

「酒のリストは以下の通り。肉はこちらが選んどく」ザトが酒のリストを提示する。99度のウォッカから極上のスパークリングワインまである。

「スパークリングワインでお願いします。しばらく一人にして欲しい……」アダールがそう告げると宮廷直属の給仕が肉料理と最上級と思われるスパークリングワインを持ってきた。

「人生最高の食事だった……」肉もスパークリングワインも相当高価な代物を提供してくれたようだ。

その頃ジュニヤは相当なまでにへこんでいた。武人の指は噛みちぎるわ、節操なく逃げ回って関係ない国を戦争に巻き込むなど自己嫌悪の極みである。

「でも指を噛みちぎったのは皮肉にもアダール卿が力の使い方を身につけるきっかけにはなった」相談に乗っていたボスが語る。

「呪文を唱えずに魔力を行使するものは結果をイメージして術を発動するらしい。これは俺の舎弟が魔法大全の第20巻とやらを読んだ結果だ」ボスが対面でピザを食べながらビールを飲むジュニヤに話す。

「つなり、手の完成形をイメージできたから指を再生できたと?」ジュニヤがボスに尋ねる。

「そういうことだ。そして力の発動には最初のうちは苦痛を伴わざるを得なかった。今は相手がダメージを受けた姿をイメージすればその通りの効果が出せるようになったようだ」ボスが答えた。

「これを読んでおけ。俺の舎弟が書き記した魔法大全序文と第20巻だ。現代文で補足事項も書き足してある。おそらくお前さんも死ねない定めだろうしな」ボスが宝箱を手渡した。

「闇の帝王の指を噛みちぎって身体で吸収してしまった以上それは覚悟しています」序文だけを目にした後、ジュニヤがボスに語る。

「今の安寧は続いても1000年だ。次の波乱の時代はまた来るはず。まあ、そちらの存在は誰も予言していない。せいぜい長い時を気ままに過ごせ」ボスがそう告げた。

「そうですね。旅にでも出ようかと思います。この宝箱とともに」ジュニヤはそういうとピザとビールを平らげたあと翌日にはボスに授かった武装を身に着け馬車で旅に出た。

「ボス、今回の戦いの報酬についてですが、一枚の金貨もないってそれないっすよ!」サトケンが怒り心頭で入れ替わりにボスのもとを訪れた。

「ああ、報酬ならザトに渡した。お前に渡すと無駄遣いするだけだからな」ボスが不遜な笑みを浮かべる。

「ザトはそんな事を一言も言ってない!あいつ報酬を何に使ったんですか!」サトケンがボスに尋ねる。

「宮廷ピザ職人の一番弟子と最高級の牛のつがいだ。パヴァロンでもピザが食べたいんだと」ボスがそっけなく答える。

「報酬はピザ食い放題っすか……せめて一本だけスパークリングワインをおまけに……」サトケンが涙目で返答する。

「ああ、今最上級を一本開ける。1ケース持って帰るか?」ボスが笑みを浮かべる。

「今、ここで1ケース開けます!ボス、一緒に祝杯を上げましょう!」サトケンが素手でスパークリングワインの栓を引っこ抜きラッパ飲みする。

「おし、こっちも飲むぞ!」ボスも素手でなれた手付きでスパークリングワインのコルクをひねって開くとラッパ飲みした。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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