子供に見せてはいけない有害なダークファンタジー
時事ネタ、現代モノを書くとなんかヤバイので「絶対ありえへん、普通!」なコンテンツに逃げることにしましたby天然無能@フォルダー属性修正中
第1話 若き魔王の苦悩、そして狂おしいばかりの美しき世界
今から300年前ほどのこと。魔境と呼ばれる危険な世界と美しき世界と呼ばれる安全な世界、この両者は干渉を避けて存在していた。
ところが双方がお互いの世界を侵したと主張して150年に渡る戦いが始まった。
発端は人間の子供を魔境の住人、魔族がさらったことから始まった。
魔境側が一方的に悪いと思われていた戦いだが、事態とともに美しき世界が徐々に崩壊したことによって引き起こされた戦いであることが知れ渡る。
美しき世界では「深淵の闇」が身体を変化させ、魔物にしてしまう現象が続く。魔物に襲われた人間の女性もまた、魔物と交わったことで深淵の闇を帯びて快楽とさらなる深淵の闇を求めて魔物との交わりに耽る。その産み落とした子供は魔境側の住人、魔族として生を受ける。
多数の魔族の孤児は魔境側の軍に加わり、ごく少数も「悪党」と呼ばれる最下層の人々の手で育てられた。
ついに美しき世界は魔境以上の地獄、すなわち深淵と呼ばれる世界同然のの様相を呈してくる。ありとあらゆる欲望が捨てきれず、死者となっても他人の全てを奪う亡者「リア獣」が現れたのだ。
「リア獣」に殺されたものは魂さえも支配され、その下僕となってただ主君のために戦い続ける。
美しき世界最後の王国は全ての男児を「勇者」として鍛え上げ、王国神殿で「制約」をさせ、外へと放つ。
その「制約」の束縛されている間、勇者は人間の女性を見たら発情し正気を失う。そして魔王を倒すまでその制約故に死すら許されない。リア獣の魂さえ糧にして蘇り、魔物を食い尽くされてもその腹を割いて復活する。
復活と発情は容赦なく勇者の心身に苦痛を与える。しかし死ぬことさえ許されない。魔物にさえ変われない。人間の姿をしたまま魂だけが魔物となっていく苦痛に今日も勇者は苛まれていた。
魔境側の王、魔王は先代からその地位を譲り受けてまだ間がない。勇者が来るまで自分の身体を蝕む病は続く。
あまりにもリア獣とその下僕を倒しすぎたのだ。戦っているうちに自分の中の魔性が何故か失われる。最前線で名を馳せた破壊王は後方で療養中だ。これは相当な闇を抱えた相手と出会わなければ癒やされない。
極悪非道な勇者の内面に蓄えられた深淵の闇。それを糧にする術を思案しつつまた短く浅い眠りにつく。もう100年間、満足な眠りすら得られない。魔境は昼間でも闇に閉ざされ薄暮でしかないというのに……
「俺はこの世界が向いていた。さらわれてきた他の人間のガキどもの誰よりも早く魔性に目覚め、いち早く魔族と化してその魔性を容赦なく発揮してきた。その魔性を消費しすぎて身体を病むとは我ながら情けない……」羽毛枕に顔を埋め、魔王は短い眠りを妨げられ、苛立っていた。
「数多の勇者が俺を狙っているはず。それを餌食にして魔性を取り戻させるために先代が俺に座を譲ったというのに誰も来ない。死ねないはずの勇者どもよ、魔境のどこへ消えたというのだ……」頭が悪い方向にしか向かわない。これほど求めても補えない魔性に恋い焦がれながらベッドの中で魔王は苦しんでいた。
その頃勇者とその仲間たちは先代魔王の城の門の前にいた。魔境へと向かう街で魔族で賞金首の者だけを仲間にした。自分は制約で魔境が秘める魔性に囚われても変わることは出来ないが、他の者はそうではない。
それにもう、人間そのものを見たくなかった。
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