子供に見せてはいけない有害なダークファンタジー

内容は黒塗りですby天然無能@フォルダー属性回復作業終了してヒャッハー

第2話 若き魔王の黒歴史

「自分には魔王になる素質はあった。将来も期待されていた。ああ、そうとも、俺は人間だったことなんてさっさと忘れたい。なのに身体を病んでからあの時に時間を戻される……」魔王は浅い眠りを悪夢に苛まれ、髪をかきむしっている。

「人間の時は魔物から逃げ続け、最後は魔族軍と挟み撃ち。大人たちは皆、両方に殺され、子供は手かせと足かせがはめられて長い道のりを鋼鉄の馬車で運ばれた。あの時は寒くて震えた。でも今感じる寒さよりはるかにマシだった……」魔王が過去を振り返る。

魔王が魔族の虜囚となったのは120年ほど前のことだ。

「人間のままあの世界にとどまったら魔物となる。すでに闇に囚われた大人たちをこの世界に連れてくればすぐに魔物となる。だからお前らを子供のうちに一人前の魔族に鍛え上げる。情け容赦はしない」魔族の士官が人間語で説明した。

その意味が理解できるようになったのは自分がその士官と一晩を遊びと割り切って共にできるほど大人になってからだ。

魔族の寿命は人間よりはるかに長い。種の危険が及ばない限り女子は産まれない。少ない女子にありつけるのは余程高位にある者だけ。欲しいなら適当な奴を口説いて相手にするしかない。

特にこの魔王、子供の時から儚げな美しい容貌だ。当然誰からも狙われる。ただ魔王も好き者であり、相手の心を操るのに自分の美貌と身体を駆使してここまで成り上がった。

かといって武芸が苦手なわけではない。むしろ凄腕だ。自分より格下が押し倒そうものなら笑いながら短剣で背中から脊髄を断ち切ってから、心臓を突き刺さし息の根を止める。それぐらいの行為を表情一つ変えずにする恐ろしさも秘めている。

魔族には魔獣の硬い肉を噛みちぎるための牙がある者が半数は存在する。普通、人間から転じた者にこの牙は生えないのだが、内に秘めた魔性=影が強いものは牙と共に毒腺が形成される。

毒はその持ち主の魔性を反映する。魔王が牙からこの毒を相手に送り込めば3時間の興奮のあとで3日は身動きできない程の倦怠感に襲われる。

自分もうっかり弓をひくときに唇をかんだ時には毒を食らった。3時間は無双だったらしいがその後の数日は今以上の体調の悪さで腰すら絶たない状況だった。

「自分で毒を食らったのを思い出して眠気がするとは……なんとも堕ちたものだ……」こうして魔王は再び羽毛布団を被って床についた。

その日の夢は自分が鋼鉄の馬車から降ろされたときから始まった。

馬車から降ろされると足かせと手かせを外された。抵抗はしなかったが馬車の揺れで手首と足首に擦り傷が出来ていた。

さらに向こうの世界で身につけていたもの全てを奪われた。底に穴が空きかかった編み上げサンダルとボロ布に頭を通しただけの粗末な服まで奪われた。

何もかも奪われる瞬間に泣き出したり叫んだりするものもいた。だが、自分たちのどこに帰る場所が残されているのだろう?

そう考えるとここはしたたかに振る舞ったほうが良い。ご所望ならばなんでもするが高い見返りを期待しての話だ。

逃亡生活で身につけた処世術でもある。強いものの下で自分を密かに鍛え上げ、這い上がって相手を見下ろす立場になっていれば勝利は自分の手に転がり込む。

ただ、この勝負は長引きそうだ。しかし何もかも失った魔王となる運命の子供はすでにこの時点で十分すぎるほどの魔性を内に秘めていた。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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