ヴが無くなった世界でヴの名を叫ぶ物語
【緊急連載】ついに「ヴ」の廃止が決定したようです。そこで「ヴ」が無くなった世界を描くダークファンタジーを連載することにしました。
誰だ、ルーン・クエストとウォーハンマーファンタジーをパクっただけと言うのは……
第1話 この世界にヴが生み出され消えるまでの物語
人々は「ヴ」を軽んじていた。そして「ヴ」を不必要なルーンだと廃するべく魔法学会が活動を始めた。
だが高位の魔術師たちさえ「ヴ」の本来の役割を知らぬまま、それを世界から廃してしまった。
その日を最後に命の長さを定められた全ての生き物の内側に封じられた本質である「ダイモン」と呼ばれる悪しき守護霊が生き物の心身を支配した。
ダイモンの力によって全ての生き物は魔物となった。
この世界に「ヴ」が現れてから4000年が経過した後のことである。
「ヴ」の現れる前の世界は全域を魔物が支配する暗黒の時代だったとされている。
だが命の長さを定められることと引き換えに、悪しき守護霊を封じる力を求めた勇者たちが探索の末「ヴ」と呼ばれるルーンを発見した。「ヴ」に触れた勇者たちは悪しき守護霊から開放され、各地に「ヴ」を持ち帰り、世界は魔物の支配から命を定められた生き物の支配する世界に急速に変化した。
「ヴ」は強烈な光を放ち、ダイモンの力を無効化する。「ヴ」を恐れるものは「ヴ」の光から逃げるように洞窟や地下といった闇の世界へと去っていった。
その闇の世界を生命の長さを定められた者たちは「魔界」と呼ぶ。
闇深い森や薄暮しか存在しない世界では「ヴ」の影響力はかなり低い。闇深い森に住む獣人は「ヴ」が現れてもそれ以前の時代の生き物の姿をしている。
極地に暮らすノースメンと呼ばれる北方蛮族は「ヴ」の影響力の薄い世界に暮らすが故に魔物と共存し、悪しき守護霊を産まれながら宿している。
北方蛮族の守護神が未だに暗黒の神々であることも「ヴ」の加護が薄いことが原因とされている。
北方蛮族の王族は15歳の誕生日に成人となるべく暗黒の神々の洗礼を受けるしきたりになっている。
その洗礼は心臓の真上に、暗黒の神々のルーンの烙印を押されるという苦痛に満ちた儀式であり、その間目を閉じることすら禁じられる。
洗礼を受けた時の苦痛はすぐに失われる。そのかわり無意識のうちに徐々に悪しき守護霊に心身を支配され、最後には不老不死の魔物と化す運命を背負うこととなる。
産まれたときから心身をダイモンに支配されている者も稀にこの世界に誕生する。北方蛮族にとってこれは名誉とされているがそれ以外の社会では悪の申し子として「ヴ」のルーンを持つ神々の司祭の手でその生命を絶たれる決まりとなっている。
しかし、親心から司祭の目を逃れ悪の申し子を育てる親もいる。だが、その子供は産まれたときからいつかは不死の魔物となる運命を背負っている。
魔物と化した時、彼らは何もかも失って闇の世界である魔界へと孤独な旅に出る。
北方蛮族の王子キミフコもまた、産まれたときから暗黒の神々のルーンが不気味に輝いていた。これはすでにキミフコの心身がダイモンの手に渡っている動かぬ証拠である。
洗礼を行わなくてもキミフコがいつしか不死の魔物となることだけは定められていた。ヴが廃される2000年以上も前の話である。
「ヴ」の帝国の第1王子を討ち取りその軍を退けた直後、キミフコは口から人間の歯4本を鮮血とともに雪原に吐き捨てた。
「来るべき時が来たというべきか……」人間の歯に置き換わった魔物の毒牙を舌で触れながらキミフコは自分が不死の魔物と化したことを理解した。
それ以降、北方蛮族の希望を背負った王子キミフコはこの世界から姿を消した。
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