Downfall The Empire of Tahjimar

これは悪魔で全員邪悪な世界を舞台にしたものです。現実に持ち込まないように……

第20話 暗黒の王子が語る帝国の弱点と顛末(その2)

「闇の力はタジマールを限界まで持ち上げる。とことん持ち上げる。そして暗黒の神々と敵対すると同時にその手をはねのけ突き落とす。そう、裏切りの絶望の中で死んでいった者たちは裏切ることを知っている。その好機が来たら実行するだろう」アノマツが真剣な顔で語った。

「俺とごくわずかの戦友だけが生きて暗黒の軍勢に加わった。彼らは暗黒の魂と戦った後、悪い風邪でも患ったかのように苦しんだ。その末に彼らは変異した。皆、自分自身をしばらく恐れていた。そして暗黒の軍勢に加わることを決断した。自分に対する嫌悪、恐怖。それを抱えながら彼らは俺と列を並べ、帝国を憎んで敵対した。彼らは俺以上に帝国には残酷だった。裏切られた末に変異した人間の恐ろしさを俺は見た。初めて俺が狂気を感じた瞬間だ。あれは俺でも飲み下せない。暗黒の王子に転じた今でも……」アノマツが100年前の真実を語る。

「その兵士たちは……どうなった?」答えを知っているがアノマツの口から聞きたい。カヘナシはそう望んだ。

「死にたがりの兵士を俺はなんとか実戦に対応させていた。闇の矛先を自滅から敵へと向けるのに苦心した。あれほど指揮しづらい部隊は無いと他の指揮官からも言われていた。俺だって嫌だった。だが、俺が連れてきた兵士だ。俺が指揮している以上俺は逃げたくなかった。だからしっかり戦わせ、戦果を相当稼いだ。帝国兵の屍を見て戦果を確認する。それを兵士に伝える。俺と兵士はその達成感でしか救われなかった。俺がつれてきた兵士を指揮官として送り出した後、俺は暗黒の神々に呼び出され、その世界へと誘われた」アノマツが最後の一兵まで指揮し続けるとは驚きだ。

「お前って責任感の塊じゃないか……」カヘナシが呆然としている。

「責任感と呼ぶな。俺は裏切られた捨て駒を暗黒の軍勢で最も恐ろしい手駒に鍛え上げ、帝国軍に悲鳴をあげさせ、袋小路に追い詰めて皆殺しにしてその屍の山を見たかっただけだ。俺が欲したからそうしただけだ。結果として指揮官としての責任は果たしているが、それが目的だと勘違いしないでくれ」アノマツが機嫌を悪くする。

「お前って闇の力を好むくせに向かっていく方向が前向きすぎる……理解不能……」カヘナシが首をかしげる

「俺は闇の力を抱えて苦しめない。好む力は身体が勝手に吸収する。ジーナと子供に与えるものに手を付けないでいるのも辛いほどだ。だからより強い闇の力を求めて確実に手に入れる。それが前向きになっているなら偶然だ」アノマツが羨ましい悩みを口にする。

「闇の力で苦しんでいる奴がいたら教えろ。善意ではなく大量に必要だから全部吸い尽くす」アノマツが更に続ける。

「大量に必要って……」カヘナシが尋ねる。

「俺の息子が……俺以上に闇の力を求めるんだ。あの貪欲な子供が生まれて外界の闇を喰えるようになるまで俺は大量の闇の力を吸い取って与えなければならない。あいつはジーナを通じて求めてくる。ジーナを通じて奪われる快感が欲しくて俺も闇の力を更に求めている。後は戯言だ、聞くな」アノマツの複雑な家庭の事情を知り、カヘナシが笑い転げている。

「その……お前の欲望を前に向けているのは何者だ?常に追い詰められて前に向かうしか無いって……お気の毒に」カヘナシが笑いながら言った。

「知らねぇよ。生まれつき俺はそうだ。常に貧乏くじを引き続け、追い詰められて嫌がおうにも前向きにさせられる。恐怖と狂気は俺の好みだ。だから全て吸収してしまうからそれで苦しむ奴が理解できない。周りの奴が闇を抱えていると無意識にそれまで喰っている。おめでたい奴だと俺を見るなら笑ってくれ!」暗黒の王子としては闇を抱えられないというのは辛い悩みだ。

「おまけに闇の力を吸収して回復や身体能力に向けてしまうおかげで暗黒魔法の才能は永遠の0。魔術師を見ると腹立たしい。嫉妬する。だから消す。ざまあみろ!」ついにアノミツが不満を爆発させる。それを聞いているカヘナシは哀れんでいいのか笑っていいのか対応に困っていた。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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