深淵の王子様と旅の仲間たち
これで「まとも」というレベルのおバカファンタジーはこちら。(繰り返すがAD&D2e使ってます)(でも”Neverwinter Night"になれない作者やっぱりバカ)
その5:酒場の主人と深淵の王子がグルメで意気投合したようです
「ホットドッグのソーセージ、それにこのハーブティー、なかなか美味だ。ハーブの使い方が絶妙だ」ホットドッグとハーブティーに食らいついていたアレアウィンが感想を語った。
「よく気づいたな。ほとんどの客はこの隠し味に気づかない」最初は訝しげな目でアレアウィンを見ていた主人が喜んでいる。
「うーむ、次はハムステーキとハーブティーをもう一杯!」アレアウィンの食が止まらない。誰かさんが荷物を持って逃げ去ったために一日飲まず食わずだったからだ。
そこにこの隠れた名店が現れた。アレアウィンの食欲が暴走する。
「うむ、ハムにしっかり下味をつけた後で更に隠し味を加えて焼き上げたこの仕上がり、最高だ。ハーブティーとの組み合わせもなかなかのものだ」アレアウィンが感想を語る。
酒場の主人はこの時点でこの客が相当いい育ちか料理人の息子か、その修業をしていた人物だと推測する。
「なかなかの食通なようですな。しかも読み書きができるようで……」酒場の主人が鋭い指摘をする。
「そちらこそ鋭い観察眼と素晴らしい料理の腕の持ち主だ。昔は軍の幹部だったが今は料理人を装っていると推測する」アレアウィンが酒場の主人に勝手な想像を巡らせる。
「残念ながら軍の幹部ではない。ただし『スタビライザーズ』のひとりとしてトラベラーズ・ホールドを任されている」酒場の主人が意外な正体を明かした。
「えっ!『スタビライザーズ』ってことは……盗賊じゃなくて僧侶だったのか!」お坊ちゃま育ちのアレアウィンでも知っている「スタビライザーズ」は前にも悪にも偏らず、世界を維持することを目的とした教団だ。
調和の神と秩序の神を合祀していることでも知られている。
「そう、この地域は元々が緑の肌の一族や山賊といったアウトローの吹き溜まりだった。そこに最大の敵、亡者が現れた。トラベラー・ホールドには教団が求める情報が勝手に集まってくる」酒場の主人が語った。
「なるほど……では『滅びの指輪』についての情報もありそうだな」アレアウィンが探しもの「滅びの指輪」について酒場の主人に尋ねた。
「アレの存在を知っていると言うことはその黒髪の下に角でも隠れていそうだな……」酒場の主人がニンマリと笑みを浮かべた。
「……なんでわかった」アレアウィンが慌てている。
「アレを探すためだけに来たのが深淵の一族だからな。アレを持ち出されて深淵の面子は丸つぶれだ。血相変えて探すのも無理はない……」酒場の主人がアレアウィンが知りうる事実をすべて突きつけた。
「そこまで知られているのか……そう、深淵の一族が200年以上探しているのが例のアレだ」アレアウィンが素直に語る。
「深淵の強力な一族は悪しき魂の集合体を力で封じていた。外に出ようとすれば容赦なく痛めつけた。ところが深淵の住人に取り憑いた悪しき魂が『滅びの指輪』を地上に持ち出させた。それ以降、その悪しき魂は分裂し、悪人に宿って怪物として地上を歩き回る時代が続いている」酒場の主人が答えた。
「古代語を学んでおくべきだった。現代語文献にそこまで詳しい記述はない」アレアウィンが語った。
「お互いに名乗っておいたほうが良さそうだな。俺は『スタビライザーズ』の司祭、ケアン。酒場の主人としてこの地域の情報収集を任されている」酒場の主人ケアンが素性を明かす。
「俺は深淵の一族の王子、アレアウィン。『滅びの指輪』を持ち帰って『深淵の果実』を手に入れるのが目的だ」アレアウィンも隠さず素性を明かす。
お互い高位者同士、ここは正体を明かして取引に持ち込んだほうが得策だ。
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