Downfall The Daylights pt.5
畜生作者による極悪ラノベの続きです
「黙って聞いていれば言いたい放題言いやがって!」カーテン越しにいたはずのジュニヤが突然殴り込んできた。
その傍らにはどす黒い液体に染まった短剣が握られている。
「拘束なんかしなければ、見張りを刺し殺す必要はなかった!」ジュニヤが激怒している。
「その……短剣だけど……どうやって手に入れた?」アダールさえもが顔面蒼白の修羅場が突然始まった。
「いつでも護身用に隠し持っているだけです!」ジュニヤが怒りを込めて答える。この男の闇は自分より深そうだ。
「とりあえず、それ、しまって欲しい……」アダールが説得を試みる。
「……獣の肉食わせろ、その鮮血をソースにして」ジュニヤがどうやら闇に目覚めてしまったようである。
「持ってこさせろ、今すぐに!」ハジが怖じ気づきながら部下に伝えた。
「アダール将軍、お食事がお済みなようなので席を代わっていただけませんか?」ジュニヤの目が血走っている。
(闇の束縛が一気に進行したのか?)アダールは後ろに下がりながら間合いを取り、席をジュニヤに譲った。
「さあ、件の魔剣の話ですが……続きを聞かせていただきたい……」ジュニヤが短剣をアダールに預けた後に静かに感情を押し殺して言った。
「あれは秘密を確実に守れる選ばれた精鋭たちの手で君主さえ知らないところに封印されている」ヴァンパイア卿はアダールの闇にさえ若干の恐怖を感じていた。
ジュニヤの様子を見る限りアダールと互角かそれ以上の闇を抱えた者のようだ。
「その剣を手にする資格が自分には十分にある……」ジュニヤが笑みを浮かべて語る。その髪は闇の束縛が一気に進んだことで完全な純白に脱色している。
「……詳しい話をして欲しい」その場の皆が口を揃えていった後、ハジの部下が獣肉のレアステーキ、鮮血ソース仕立てを給仕した。
「謎解きはディナーの後で……正直腹が減っている」ジュニヤが品格を保ちつつ、早食いを開始する。いきなり闇の束縛が進んだ結果、相当なエネルギー不足のようだ。
「いっそコウモリも生食いしたい。生きながらその身をちぎりながら……」ジュニヤの求める闇の力が大きすぎて周囲は恐怖している。
「それ、冗談だろう?」アダールが恐る恐るジュニヤに尋ねる。
「本気です。アダール卿、明日のランチは吸血コウモリの生食で……」ジュニヤが答えた。
「せめて火ぐらい通して欲しい……」アダールが頭を抱えている。
「食事が済んだようなので、かの忌々しい魔剣を手にする資格やらを説明していただきたいものだな」ヴァンパイア卿がジュニヤに尋ねる。
「自分は国王の直系の王子の一人だからです」ジュニヤの発言に皆が絶句する。この男の変化が急激すぎて頭に異常をきたしたというのか?
「ただしあの遊び人には妾腹の兄弟なんて山程いますけど!」ジュニヤの発言が一気に真実味を帯びてくる。
「とは言え父の血は引いている。よって、その魔剣を手にする資格がある」ジュニヤが更に権利を主張する。
「なんで妾腹とはいえ王子が一兵卒として海兵団に入隊した?家出でもしたのか?」アダールが好奇心から尋ねる。
「好きで狼の群れに飛び込む愚か者はいない。王后の嫉妬から追放同然で海兵団の兵営に送られただけの話です」ジュニヤが過去を語り始める。涙も出ないほど酷い過去があるらしい。
「自分が海兵団に一訓練兵として送り込まれたのは12歳のこと。王子であることも先方にはわかっていたらしく教官や指導訓練兵の玩具扱いが続いていた」ジュニヤがアダールと互角の酷い過去を話し始める。
「なんとかこの屈辱から逃れたい一心で自分は相手を観察した。そうしたらわかったんだ相手は常に注意深いわけではないことを……」ジュニヤはその頃から暗殺という特技に目覚めたようである。
「特に楽しんだ後の相手の無防備ぶりには呆れたね。だから試しにまず指導訓練兵を喜ばせるだけ喜ばした後でこの短剣で心臓を一突きして仕留めた」ジュニヤが笑みを浮かべている。周りは空いた口が塞がらない。
「それから後は次から次へと自分を弄んだ相手を暗殺の練習台にして消した。こうして恐怖の力でなんとか将軍まで上り詰めた」ジュニヤの血みどろの出世劇にもはや全員が凍りついている。
「で、誰も大量殺人について罪には問わなかったわけ?」アダールが恐る恐る尋ねてみる。
「王族を辱めた相手に対する殺人は王国において犯罪ではない。それが100人を越えようとも」ジュニヤがきっぱり断言した。本当に怖い男だと皆が震撼する。
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