Downfall The Daylights pt.4
畜生な作者が送る、ダークファンタジー極悪ラノベの続きです。
「確かにここ以上の地獄と言えよう……」アダールの話を聞きヴァンパイア卿が呆れた顔をする。
「そもそものきっかけは1020年ほど前に遡る。我々が闇の束縛を受け入れた理由はそこにある」ヴァンパイア卿が話し始める。
「我々は文明的な帝国を築いて生活していた。しかし一蛮族に過ぎない男……つまり王国の初代国王がある強力な剣を手にする」ヴァンパイア卿が口を開く。
「その剣は手にした者に敵対する全ての者の生命力を吸い取るという魔剣だった」ヴァンパイア卿が剣の話をする。
「国王は我々帝国にその剣を向けたものの帝国は数年は持ちこたえた」ヴァンパイア卿がはるか昔を思い出しながら話す。
「国王に斬られて落命したものは闇の束縛を受けることとなった」ヴァンパイア卿が辛そうに話す。戦友が斬られて亡者になるのを見ているのは苦痛意外の何者でも無かったであろう。
「皇帝はその剣に対抗して同じ効果を持つ剣を帝国の刀匠に作らせた」ヴァンパイア卿がもう一つの剣の存在を語る。
「しかしその剣が皇帝の手に届くことなく、皇帝陛下は国王率いる軍の待ち伏せを受けてかの剣で斬られて絶命した。こうして我々の皇帝までもがヴァンパイアとなった」ヴァンパイア卿が国の成り立ちを話す。
「つまりこの闇は王国自らが作り出したというわけか……」アダールが腕を組みさもありなんと言った顔で話に聞き入っているがその表情には驚きがない。
「対抗する剣が我が皇帝の骸に届いたときには我々は最後の城で戦いながら皇帝の復活を待っていた。私も人間として最後の力を振り絞り、皇帝が復活すべくひたすら王国軍の人間の命を奪い続けた」ヴァンパイア卿が人間としての最後の戦いを語る。
「我々は皇帝がヴァンパイアの王として復活するまで戦い抜いた。そして最後の反撃として王国軍から主君と城を守り抜いた」ヴァンパイア卿がかく語る。
「だが我々には主君と運命をともにするという義務が生じた。王が闇の束縛を受け、死と無縁の存在になった故のことなのだが……」ヴァンパイア卿が人であることを捨てた理由はそこにあるようだ。
「我々は主君に求めた。我々の命を奪って闇に束縛してくれと……無論主君は最初こそためらったが結局信頼できる臣下の将軍だけの命を奪って闇に束縛した」ヴァンパイア卿がその由来を語る。
「まるで今の自分の心境と似ているが自分にはそこまでして使えようという主君には巡り会えなかった……」アダールが羨望たっぷりの目でヴァンパイア卿の顔を見つめている。
「王国は500年間我々と壮絶なまでの領土争いを行った。王に与えられし闇の束縛の力を使い、我々ヴァンパイア卿は多くの王国の兵士たちを屍にして我らの下僕とした」ヴァンパイア卿の復讐の物語がここから展開する。
「復讐の物語というのは悪くない。いや、自分が求めているのも復讐かも……」アダールがさらなる羨望の眼差しをヴァンパイア卿に向けている。
「そして500年前のことになる。我々が最初に奪われし城を維持しようと、この城に王国の王自らが軍を率いて乗り込んできた。その時第二軍を率いていた将軍、それがハジだ」ヴァンパイア卿が語った。
「ハジの記憶には残っていないようだが、ハジらが懸命に戦っている前で我らヴァンパイア卿の軍勢と戦い死を恐れた国王はかの剣を投げ捨ててまで逃げ出した」ヴァンパイア卿が呆れ顔で言う。ハジは何かを思い出したようだ。
「そう、自分とその部下は最後まで国王の身を案じお供するつもりでした。しかし、我々の傷は深く、途中で全員息絶えたのです。その後の王の行方は知りません」ハジがその時の状況を語る。
「ハジとその部下の遺体は我々が見つけた。当然国王の遺体もだ。だが国王の遺体は獣の巣窟に投げ込んで餌食にして二度と復活できないようにした。こうして闇の束縛を獣までもが受けることになったのだが……」ヴァンパイア卿が国王の最後を語る。
「そしてこの国の獣は闇に束縛されし者を攻撃しなくなった。だからハジとその部下の遺体は獣に食い荒らされることなく残っていた」ヴァンパイア卿がハジとその部下の遺体を発見したときの状況を語る。
「では、我々が日々食している獣もまた闇に束縛されし存在だと?」ハジが恐る恐る問いかける。
「でなければそなたらが必要とする闇がもたらす生命力を補い切ることはできまい……」ヴァンパイア卿が赤い液体を杯に注ぐ。デキャンターの中には獣のものと思われる心臓と思しき臓器が入っていた。
「500年間闇に束縛されていなければ受け入れがたい事実です……」ハジが絶句した。
「ふむ、ではこの豪華な食事もまた自分の中の闇を育んでいると言うわけですね、美味しく頂いておりますが……」アダールが悪意満面の笑みを浮かべる。とことんこの男の闇は深い。
「もうひとりの将軍はこの運命を受け入れられるのだろうか?」ハジがジュニヤの身を案じる。
「はっきり全てを話してやればいい。絶望は一時的、かつ一撃で食らったほうが立ち直りも速い」アダールが極めて残酷にして正確な回答をする。
「なんだったら自分が彼に伝えましょうか?」アダールが意地の悪い笑みを浮かべる。
「その必要はない。この会話は全てジュニヤとやら、つまりもう一人の将軍もカーテン越しに聞いている。彼の身体は拘束しているがその必要のないほど打ちひしがれていると部下が伝えてきたぞ」ヴァンパイア卿が笑みを浮かべ全てを暴露した。
「なかなか残酷な仕打ちをなさるが、自分でもそうしたでしょう」アダールが更に付け加えた。
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