Downfall The Daylights pt.3
ダークファンタジーの2次創作というクソラノベです。
「だから今は安堵している。やっと王国という恐怖から開放された。俺の部下たちもだいたい俺と同じ境遇にあった者たちだ。だから事実を知れば心が安らぐのではないのか?」アダールの発言が本音であるなら500年の間にハジの故郷は地獄と化した。
今度はハジが苦悩する。現実の王国という地獄の存在を闇の束縛さえ苦悩に感じる部下たちが知ったらどうそれを受け入れるというのか?自分でさえも否定したいほどだ。
「ではそちらの500年を話していただきたい。闇の束縛の苦労が知りたい」アダールが笑みを浮かべて尋ねる。
「100年間は命を断つ方法を考え続けただけだった。残りの400年は暇であることを嘆く日々。君たちの地獄に比べれば確かに自分たちの苦悩など遥かに小さい問題だ……」ハジが率直な印象を語った。
「そうですか……」アダールが頷く。どうやらヴァンパイアの王とは交渉が可能らしい。
「ヴァンパイア卿に合わせていただきたい。闇の束縛の礼として」アダールがハジに依頼する。本当に闇の束縛を喜んで受け入れている表情がハジを震え上がらせて余りある。
ヴァンパイアとて闇の束縛には苦悩する。その結果として彼らは仲間を増やそうとして他人を襲う。ハジは想像を遥かに超えた現実の残酷さを痛感するとともにこれをヴァンパイア卿より上の王にさえ伝えなければならないと感じた。
「わかった。今夜にも機会を作りたい。でももうひとりの将軍はどうしている?」ハジがアダールに尋ねた。
「彼は苦労知らずの高位貴族の子弟だからな……事実を知れば常人並みには苦悩するだろうな……」アダールがこの件については思考を巡らせているようだ。
「彼に誰が闇の束縛について説明するか……ヴァンパイア卿の話を伺ってから決めたいのだが……」アダールが思案の末ハジに告げる。
「それについては合意する。それにアダール卿にもまだ話していない事実をヴァンパイア卿から直接聞いてもらいたいという思いもある」ハジが答えた。
「まだあるのか?」アダールが怪訝そうな顔をする。
「自分にも詳細のわからない事実がまだ残っている。自分自身もこれについては納得出来ないまま500年を過ごしている」ハジが答えた。
「500年納得できない事実ねぇ……」アダールが冷たい笑みを浮かべ、興味をハジに示した。
「ヴァンパイア卿が食卓の間でお待ちです」ハジの部下がアダールが休んでいる部屋に服を持ってやってきた。古風だがなかなか豪奢な服だ。
「礼装か……久しぶりだな……」アダールは着替えると鏡の埃を払い除けてその姿を見つめる。
「鏡には映るようだな……」何かとポーズをつけては安堵する。
「待たせた案内してくれ」戦場で手に入れた礼装用の短剣を腰に下げてアダールは食卓の間へと向かった。
「ようこそ亡者の国へ」ヴァンパイア卿が主席で待ち構えている。
「席についてもよろしいか?」アダールが尋ねる。
「ああ結構だ。それから闇の束縛について説明させてもらう。人間としての食料は獣を仕留めるなり森に山菜を取りに行くなりして調達しなさい」ヴァンパイア卿がアドバイスする。
「残念ながら飲食は必要なようですね」アダールは現実に引き戻されて若干の落胆を覚えた。
「まあ、今回は狩りの達人であるハジの軍隊が食材を調達した。彼らは500年この国で食料を調達してきた」ヴァンパイア卿が笑みを浮かべる。
「無論、闇の束縛のみで飲食を置き換えたいのならその生命を完全に奪い取っても良いのだが……」ヴァンパイア卿がアダールを誘惑する。
「しばらく人間以外の狩りを楽しませていただきます」アダールが笑みを浮かべて返答する。ハジはそのやり取りを見ながら背筋が寒くなってきた。
「この男には自分の知る限りのことはすでに話してあります。ただ自分にさえ知りえない事実は話しようがありません」ハジがヴァンパイア卿に伝える。
「ほぉ、ハジが自ら500年前のことを聞き出そうとは初耳だな……」ヴァンパイア卿が物珍しそうにハジを見つめる。
「我らがこの国で暮らし始めてからの500年で王国はこの国以上の地獄と化したようです。それをアダール卿から直接聞いていただきたい」ハジが言った。
「喜んでお話させていただきます。恐怖が束縛する地獄について……」アダールは冷笑しながらハジに話した内容を包まず隠さずヴァンパイア卿に話した。
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