Downfall The Daylights pt.16

「勇者タナボタ」よ、連載順を間違えるとは情けない……

「実は俺、あの処刑の残酷な光景が忘れられなくて困ってる。いつも頭のどこかに残ってて気が散ってしょうがない」ジュニヤが秘めた悩みを語る。

「どういう意味で覚えてる?不快な光景として覚えているならそれはただの恐怖体験だ。だが、それが心地よい光景と映っているならあまり良くない傾向だ」アダールが答える。

「実は後者なんだ。もう一度見たいんだ。人々が生きながら闇へと落ちていくあの光景を……」ジュニヤが素直な気持ちを吐露する。

「お前の闇も相当に深いな。まあ、俺に比べればまだマシな方だと思うが……」アダールはあの夜の事を語るとともに、自分はもう人間では無いのかもしれないとまで語った。

「確かに……身体に刻まれた快楽に溺れる事はある。ただ俺は完璧にシリアルキラーの本領発揮って状況……」ジュニヤが若き日の過ちを振り返る。

相手に隙があったから暗殺したのではない。相手が幸福感の絶頂だったからその生命が失われるさまを見て自分の心を癒やしていた。その悪癖がここに来てから蘇りつつある。そう考えるとジュニヤが恐怖を覚える。

「どっぷり闇に浸かってそれが底なし沼な俺と、快楽殺人者とはいいコンビだな……」アダールがジュニヤの怯えた瞳を見つめて語る。

「ただ、俺には地獄への一本道を引き返す機会を与えてくれた先輩がいた。だがその機会を捨ててこのザマだ。むこうが生きているならいいのだが……」アダールがかの先輩、ザトについて語る。

「その先輩が来たら勝てないだろうから、出会ったときに引導を渡してもらうしかなさそう……」ジュニヤがため息をつく。

まさかその先輩が騎馬民族系の悪党一味のチームプレイで負けてその一味に身をおいているとはこの時二人は知る由もない。

その先輩、ザトも孤児院と修道院の中の地獄の楽園の話を一通りサトケンに説明した。

「そこで戦士を育成すれば残酷極まりない武装巡礼団の出来上がりというわけだ……」サトケンが呆れた顔で言う。

「明らかに武人の品格の問題だ。まあ、自分も投げやりに生きてきたし人のことを言える立場でもないのだが……」ザトが話し終えて疲れた顔をしている。だが、悪夢からは開放されそうだ。

「ところでポーション騒動中なにしてたの?」ザトがサトケンに尋ねてみる。

「あれかぁ……実はとんでもないことをしでかしたらしいが、誰も何したか教えてくれないし自分の頭の中にも記憶がない。ただ見に覚えのない技術と知識が残された……」サトケンが頭を抱えている。

「内心何しでかしたか知ってない?」ザトが鋭い指摘をしている。

「どうも詐欺師集団、盗賊団、人身売買集団と変に親密な人間関係ができてたり、相手をいいはぐらかせたり口説き落とすのが急に上手くなったり……相当な悪事を働いたらしい」サトケンが思い口を開く。

「それで悪党と言われているみなさんと互角に話ができるわけだ……」ザトが変に関心する。

「この剣と鎧も実は親の金を盗賊団に盗ませて特注した代物で……ポーション騒動中にやったらしいんだけど……」サトケンが更に罪を告白する。

「馬は?」ザトが更に余罪を追求する。

「馬具もろとも自ら王の厩から盗んだ。どこで盗みの技術を覚えたのかは覚えてないから多分騒動のさなかに覚えたらしい……」サトケンの余罪が更に増える。

「剣の師匠は?」ザトの追求が続く。

「詐欺師集団直伝の話術で口説き落として無料レッスンを一週間受けていたという話だが……」サトケンが赤面する。どうも詐欺師集団、盗賊団、人身売買集団、剣の師匠、王の厩の番人と変に親密になってしまったようである。

「技術を短期間で身につけられるその才能、羨ましいけどポーションの恐ろしさはよくわかりました」ザトが冷たく言い放つ。

「ポーション騒動は魔法学校名物だから学校が責任とったけど親との関係は修復不可能だから卒業直後に武具と馬を持ち逃げして家出した」サトケンが出奔に至るまでの物語を語る。

「魔法学校に行く前に牢屋に行ってたほうが人生先回りできたかも……」ザトが一言つぶやく。

「自分でも悪党系の技術の伸びについては驚いている。正直魔法の素質はないかわりに、悪党の素質はあるらしい。まあ、今でも悪党との関係は良好だし、時たま相談にも乗っている」サトケンが頭を掻きながら告白する。

「縁を切るつもりは毛頭ないわけだ……」ザトが流石に呆れている。

「一期一会と腐れ縁を大事にする性格だからしょうがない」サトケンが素直に打ち明ける。確かに善悪構わず友人関係が多いのはこの男の美点である。寛容と言えば聞こえがいいが、無節操と言われても文句の言える立場ではない。

たたしこちらはまだ小悪党自慢のレベルである。アダールとジュニヤは自分たちが漆黒の闇へと落ちていくのに歯止めが掛けられず苦悩していた。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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