Downfall The Daylights pt.17 REDUX

人工無脳が配信ミスをした第17話です。第16話を読んでいなければ意味不明です……(なお下の画像はWindowsHD壁紙としても使えるにょ♪)

ヴァンパイア王はアダールを手に入れるべくまたもや誘いを掛けてきた。アダールはすでに自分が人ではない何かになっていることは理解している。

「ならばとことん闇に落ちてみるのも悪くはない。今更引き返すこともできないしな」アダールは燭台も持たずに薄着でヴァンパイア王の部屋へと向かった。

「闇でも目が見えるようになるとは……どうやら人間ではなくなったようだな」燭台無しで部屋にたどり着いたアダールの金色の瞳を見るなりヴァンパイア王が笑みを浮かべる。

「それはもう自分でも納得している。結局自分はこうなる運命だったらしい」アダールがニコリと満面の笑みを浮かべる。自分の闇を先方に測らせるのも悪くはない。

「闇に抱かれるのはそんなに甘美か?余はしばらく怯えていた……」ヴァンパイア王に床に入ってきたアダールを見てヴァンパイア王が尋ねる。

「それは自分が望まなかったから。自分は闇の中でしか心身ともに救われない。だから闇を強く求めている。ただそれだけだ」アダールが自ら衣服の胸元を晒す。引き締まっている割には肌がなめらかで白い。

「その肌を見せつけて余が傷つけずにいられると?」ヴァンパイア王の鉤爪がアダールの胸板を撫でては傷つける。自分の肌が裂かれて血を流しているのをアダールは興味深そうに眺めている。

「自分の中の人間が失われていくのを見るのがこんなに楽しいとは……」アダールがヴァンパイア王の目を見つめて感想を述べる。

「楽しみは長続きさせたいものだ。他人を闇に徐々に染めていくというのがこんなに楽しいとは気づかなかったぞ」ヴァンパイア王が口にする。この男を一気に変化させてはならない。

「この者の求めるものを長く与えて支配する」ヴァンパイア王の思惑は皮肉にもアダールの思惑と合致する。

アダールは自分の限界を図るほどの闇の容量を持っているのはヴァンパイア王ただ一人か暗黒神そのものしかいないであろう。

傷口から流れたアダールの血で自分に奪われた闇の力を取り返そうとするヴァンパイア王の行為が更にアダールの秘めた闇の力を覚醒させる。

闇の力が自分の中で増幅するほどアダールの心身が満たされ幸福感さえ感じさせる。

「自分ははじめから人間ではなかった……」アダールが幸福感のあまり口にする。

「そうらしいな。奪っても尽きない闇の力。いや、奪えば奪うほどその力が増している」ヴァンパイア王が傷口から流れた血を舐め取った後、アダールの黒髪を撫でながら率直な感想を述べる。

「普通は力を奪われれば髪の毛の色も抜けていく。いや、髪の毛さえもが失われる。しかしそなたは真逆だ。茶色がかった髪は漆黒に染まり、その量は確実に増えている。人間の反応ではないな……」ヴァンパイア王がアダールを挑発する。

「ならとことん闇に染めて頂きたいものです。こうして闇に落ちている時が一番気が安らいでいる」アダールが最近素直に笑みを浮かべる。

(人間でなくなった時、絶望を感じた自分とは逆に、人間を捨てていくほど希望を見出す闇の申し子。自分は怪物に餌を与えているだけなのか?ならばとことん餌を与えて育ててやろう)ヴァンパイア王は一晩中。アダールをその腕に抱いていた。

「お目覚めのようですね、王よ」アダールが先に目を覚ましている。闇の申し子が光の世界にいたときにどれほどの力が失われていたのか?

「部屋は片付けて去りますから」アダールが更に付け加える。はるか昔に自分の皇后もヴァンパイアになった。だが彼女は闇の力で自我を失い、自分の下を離れていった。今では自分以上の残虐さを見せる存在である。

その別れた妻に比べてこの闇の申し子は出来すぎている。感心しながらその作業を見つめているが、闇の中での視力が増したのか、その瞳により強い金色の光を湛えながら手際よく乱れた寝台を片付けている。

アダールは部屋を片付けると自分の着衣を整えたのち、一礼してから去っていった。その礼儀正しさから相当に軍人としての訓練がされているらしい。

「ジュニヤ、話がある」アダールが不安で眠れぬ夜を過ごすジュニヤの部屋を訪れる。

「俺はどうも生まれた時から人間ならざる存在だったらしい。なんでも『闇の申し子』とか……」アダールがジュニヤに説明する。

「そうかもしれない……闇に落ちているはずなのに生命力が増えている気がする……」ジュニヤもそう感じていたらしい。最近のアダールは変に幸せそうだ。

「俺は自分の限界に挑戦するつもりだ」アダールが決意を口にする。とことん闇を増殖させて見るつもりだ。

「答えが見えたんだ自分の先にある地獄への一本道の最終目的地。それは結局、暗黒の世界だったということだ」アダールが率直に意見を述べる。

「じゃあまさか自分の生きる場所、そこは死の世界だと言うの?」ジュニヤが困惑した表情でアダールに問う。

「もう一度俺と一緒にあの城に行くか?」アダールがジュニヤに申し出る。実のところアダールも死霊魔術師と相談したいことがある。

それは自分の存在が他者に与える影響だ。存在するだけで自分は他人を闇で束縛してしまうのか?正直その不安を最近覚えてきた。故にあえて死霊魔術師に相談したいのだ。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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