子供に見せてはいけない有害なダークファンタジー
子供は寝ろby天然無能@アルティメット・エディションボーナスディスク付き
第7話 魔王の子供扱いが終了する気の毒な話
「……可愛くねぇ」自分の顔がどうも愛せない。しかも服のサイズが一着も合わないとはどういうことだ?
「肩幅も胸囲も足りない……腕も相当きつい気が……」一晩で俺は激太りしたというのか?精神的に打ちのめされて狂いそうだ。
「腰はなんとか大丈夫だ。でも裾が窮屈な気も……」アンダーが俗に言う提灯ブルマで救われた。ただ股上のサイズはギリギリだ。なにせ身体の中心にあるものが成長した気がする。丈も全く不足だ。
「そ、ソックスがふくらはぎまで上がらない……これはルーズにするとして……靴は長さも幅も足りない。スリッパを履いて場を誤魔化すとしても、この無様な格好で部屋から出ろと?!」姿見の中の自分を見て涙も出ない。血の気が引く。
俺が部屋で途方に暮れていると執事が様子を見に来た。その執事が笑いをこらえられないでいる。
「これならすぐにサイズが合いますよ」渡されたのは紫のローブ。ベルベットで上品な出来だ。紫という色についてはややホスト感を感じるが身につけてみると満更ではない。
「……本職のホストに見える」率直な俺の印象だ。靴は高級な編み上げサンダルだ。やはり爪が邪魔をしている。
それでなんとか部屋から出られたがさすがの主人も俺の変わり果てた姿を見て凍りついている。
「一晩で種族が変わって成人するとは珍しい……」主人が俺を見つめながら言った。
「種族が変わるって?!」答えはわかっているが他人から言い渡されたい。
「人間から魔族に一気に変化した。しかも成人するのと同時だ。同時に起きるという話は聞いたことがないのだが、自分の預かり期間は成人するまでとされている。これからは兵士の訓練所送りだ……」主人がひどく消沈している。この先俺ロスでしばらく泣きくれたという。
最後の夜伽で始めて「達する」の意味が理解できた。悶えるような快感が途切れて脱力するのが自分でも辛い。唯一の楽しみを害された気分だ。だが主人はそんな俺が達する瞬間を見て変に今日は激しい。一晩で達した回数は数えなかった。気がつけばベッドがドロドロだ。
一風呂浴びて服を着た。これでこの主人の元から離れて兵士としての訓練が始まる。自分の子供扱いは終わった。しばらくは訓練に没頭してこの悪夢から逃れたい。
訓練所につけば新しい服を支給される。そのためこのローブとサンダルが餞別となった。
後にこの主人の下に伝令として訪れた時は大人同士の関係となった。その時に肌の手入れについて聞かれたが髭とムダ毛に悩むことは今もない。
主人に言わせれば妖艶だとのこと。そう言えば誰からも男らしいとか逞しいと言われたことはない。決して腕力や体力に問題があるわけではないのだが……
と、言うわけでこれからは身だしなみも何もない。身体が成人となるのと兵士になれる年齢との差は大きい。訓練期間は最短で3年。その間は給料なしだ。
最初の人生の挫折が訪れた。少なくともその時は振り出しに戻された失望感しか感じられなかった。
訓練所に丸坊主にするという頭髪規定がなくてホッとした。この顔で丸坊主にされたらあまりにも艶めかしい。粗末な衣服の上に粗末なパデッドアーマーが支給される。これが後の全ての鎧の下地になる。訓練で実物を使うのは基本動作を覚えてからのことになる。武器になれるまでの期間は穂先やブレードが木製で刃がつけられていないなどの練習用のものが支給される。
俺が欲しいのは食事の時に食卓に出される短剣だ。標準品だが刃がついている実物だ。肉を切りながらあの練習用には何の役にも立たないもどかしさと不快さを覚える。
靴は粗末な5つ穴の足首までの革のブーツだ。初日はゲートルの巻き方からスタートした。
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