子供に見せてはいけない有害なダークファンタジー

魔王ちゃんの黒歴史が明らかに……by天然無能@暗黒金属面

第10話 魔王がルーキーマッチで格上をジャイキリする話

柄の部分は本物だが、刃の部分が木製で刃のついていない模造のダガーを渡される。ダガーならば物心ついたときから護身用に持ち歩いていたし、便利な道具としても扱い慣れている。

実は俺自身ショートソードぐらいなら扱える。半年ばかりオークのファミリーにお世話になっていた事がある。オーク語とゴブリン語も会話だけなら問題ない。

オークの世界は悪ではあるがルールを重んじる世界でもある。格下が首領を殺害しようものならそのファミリーから永久追放される。

単独のオークが生きていけるほどこの世界は甘いものではない。ただし首領は決闘を申し込まれたらそれを受けて立つ義務がある。ただし双方ともに負けを認めた相手を殺害することは禁じられている。

例外は自分の嫁に手を出した間男への制裁だ。これはファミリーによって処刑される。実に厳しい世界である。

自分はオークの配下のゴブリン以下に扱われていたが、まとまりを欠く美しき世界の住人よりもまともに見えたのを覚えている。

俺も何度かはオークのファミリーのために戦ったが、他人のシノギを奪いに来た人間の山賊を数人仕留めたことは忘れたい。筋を通したとは言え後味が悪かった。

その事件の後、俺は魔族側の陣営に逃げ込んで保護を求めた。人間にもオークのファミリーのどちらの側にも馴染めなかったから新天地を求めて逃げだしたなどとは口が裂けても言いたくない。

幸い魔境での生活は俺の性分にあっているようだ。容姿とは真逆の凶暴で色狂いという本性が……

話をもとに戻すとして、暗所での戦闘のポイントだ。自分の領域をしっかりと把握する必要がある。例えばダンジョンの片隅ならその部屋の広さや通路の幅といったものだ。これが敵を探り当てる唯一の手がかりとなる。

あとは聞き耳を立てること、仲間の音と敵の音を聞き分けられれば敵の音に向かって武器を向ければほぼ確実に戦いに持ち込むことができる。

と、言うわけでこの戦い方については俺は初心者ではない。実戦経験者ですらある。

いつもの手順通り訓練の部屋のサイズをしっかり頭に入れておく。部屋の中での自分が立てる物音も当然同時に把握する。

相手はこの過程を怠っている。これは教官にも責任がある。この相手を倒すことで教官にも反省を促したい。実戦ではそれが命取りだ。

お互いに目隠しをされる。自分からは先に動かないのがこの戦い方の鉄則だ。

敵は最後の視覚に頼って俺に近づいているのが足音と装備の音で伺える。俺は姿勢をかがめて敵の足音に集中した。相手の弱点は俺より背が高いこと。つまり下段の目標に気づかない可能性が高い。これは経験で身につけた悪知恵だ。相手が触れた瞬間から戦いを始めればいい。

相手はこの罠に引っかかった。俺がかがんでいたなど気づかずに俺に近づきすぎたのだ。すばやく立ち上がり短剣を間合いのない相手に何度も突き立てる。相手は身動きすら出来ず混乱している。

これが実戦なら相手は確実に死んでいる。俺の背が低いと言っても実物だったら腹に短剣が数回は刺さっただろう。

教官が俺を制した。どうやら予想通りの結果が出たらしい。目隠しを取ると相手が腹を抱えて悶えている。ちょっと力が入りすぎたようだ。

「どこかで相当な場数を踏んできたな……」教官は見抜いたようだ。俺が初心者ではないことを……

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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