子供に見せてはいけない有害なダークファンタジー
魔王ちゃんの意外な弱点が発覚する回ですby天然無能@ブラクラを許すな
第11話 魔王が才能を容赦なく発揮し始めた話
「背丈が足りないのが残念だ。これから鋼鉄製のブロードソード……と言っても刃を入れてはいない模造品だが。それと革鎧で戦いの練習をする。弓兵過程での護身程度の剣術だ。並行して弓にも手が出せそうだな……その様子だと」教官が更に条件を引き上げてきた。
だが弓兵過程を終了すれば待機兵として給与が出る。少なくともあと2年11ヶ月は実戦に出られない以上待機兵としての給与はありがたい。
早朝と夕方は剣の練習に割り当てる。白昼の薄暮の時間には集中して弓の練習をする事になった。まあ、遊ぶ資金も場所もなければ腕を上げるのに時間を使い切ったほうが将来の稼ぎにつながるだろう。
剣の重さで相手を切るブロードソードの扱いは突き刺し武器のショートソードやダガーとは全く勝手が違う。
相手が俺より背が低ければ上段からの振りでヒットするが俺より長身の相手となると側面を狙って叩きつけるようにヒットさせるしか手段がない。
相手が盾持ちならばまずは腕にヒットさせて盾を無効化してから胴をひたすらヒットし続ける。大体そんなところだろう。
と、言うわけで剣の素振りも上段からの振りのときには腕を狙うよう振り下ろすよう心がけた。側面からの振りはすばやく確実に当てるよう多くの時間を割いた。
「あいつ、素質あるな……」教官の1人が俺を見つめている。
「ああ、剣を見てほぼ正しい使い方を見極めた。刺し剣と切り剣の違いを教わらずに理解できるあたりは天才だ。正直末恐ろしい……」もうひとりの教官が懸念する
「型から教えなければならない同期との差が大きすぎるのでは?」剣の担当教官が気にかける。
「あの振りを見ていると素人には我流の型の出来ていない振りに見えるが俺に言わせれば達人の振りだ。あとは相手にヒットさせる経験を積めば大幅に伸びるだろう」歩兵の剣術担当教官までもが様子を見に来た。
「他の者が型を身につけるまで弓と基礎体力の向上に専念させよう。流石に弓だけは初心者だろう……そう信じなければ立場がない」教官団の協議で1週間で訓練プログラムが変更された。
筋肉トレーニングについては全く問題がなかった。ただ自分自身の体重では負荷不足もいいとこだ。負荷が強い訓練を短時間にしなければ自分の時間配分の無駄なので適当な石版を数枚拾って背中に乗せて腕立て伏せを繰り返している。
「あまりむちゃすると身体を壊すぞ……かなり入れ込み過ぎではあるまいか?」体力担当教官が流石に心配げに見つめている。
「子供の時から堕ちた大人を持ち上げていますが何か問題ですか?」など自分から黒歴史を告白するわけにはいかないのが辛い。
だがあれは地獄に等しかった。無限に続くはずの快楽がいきなり終わると同時に自分が押しつぶされてそこから自分の倍近い大人……しかも脱力しきった大人という負荷を持ち上げて脱出するのには流石に閉口した。
それにくらべれば石版数枚など軽いものだ。
大人に押しつぶされる地獄以上を経験した。それは意外にもランニングである。相手の間合いを見てスプリントで逃げるか攻撃するかには自信があるが長距離を定速で走るというのだけは全くの初体験だ。
息が上がって目眩がするが快楽とは逆方向。ともかく辛い……同じ息切れと目眩でかくも夜のお遊びとランニングとでは天国と地獄とは……初日は意識が飛びかかってギブアップした。
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