子供に見せてはいけない有害なダークファンタジー
新キャラクター登場ですby天然無能@ウイイレ2018のデータv1.02作らなければ(とほほ……)
第12話 酒場の店主の息子の誕生日
魔境と美しき世界の境界にある、ローグフォートの城の酒場「ホワイトアウト」に熟練のトレジャーハンターの一団が帰ってきた。ここは荒くれ者や賞金首だけが暮らしているが、最強の戦闘力を持つ者が集まる安全地帯としても知られている。
「まずは酒代を置いていけ……」悪人ではないのだが、善人でもない荒くれ者の集まりであるトレジャーハンターにひるむことなく店主が低い声で言った。
「踏み倒す相手じゃないって分かっている癖に……」トレジャーハンターの一団がぼやきながら安ワイン代をカウンターに置いていく。
「毎度どうも」店主が人数分の安ワインの瓶をカウンターに並べ、銀貨の山をかき集めて手際よく金属の箱に入れる。腕利きの盗賊でも店主か俺でしかこの箱の鍵は開けられないそうだ。
「……何か厄介者を持って帰ってきたようだな」受け取りに来たトレジャーハンターたちに店主が一言告げた。
「……気づかれたか」トレジャーハンターのリーダー格の男が店主に耳うつ。
「雰囲気で気づかぬと思ったか?」店主がニヤリと冷笑する。
「実は最悪なのを拾ってきた。宝は山程、労せず手に入れたがあれを追い払う方法が思いつかない……」トレジャーハンターたちも困り果てた顔をしている。
「今日はうちの子……と、言ってもいい年した大人だが、あいつの誕生日に拾ってくるとは……」店主もあまりいい表情をしていない。
「うちの子って……ここの城では最大の賞金首の魔術師だぞ……」凄腕のトレジャーハンターが店主に言った。
そう、店主の息子の魔術師は武芸は人並みだが魔術については天性の才に恵まれている。それ故に魔術的な感性も生まれつき人より強い。
さらにここはすでに魔境の中だ。そして住人は皆、魔境側の者、つまり魔族である。店主も例外なく魔族である。故に、この街に来てからそう年を取ったように見えない。
「まだ誕生日は機嫌悪いのか?」トレジャーハンターが気遣う。
「まあ、100年近くああだ。悪夢にうなされなくてもこの日ばかりは誰とも会おうとせず何も食べずに酒を飲みながら読書の虫だ……今日はあの話はやめてくれ」店主があえて釘をさす。
「拾ってきた最悪な厄介者」が誰であるかを知っていたからだ。
店主とその息子がこの街にやってきたのは120年前ぐらいのこと。その頃にはこの二人は賞金首の身分でその息子は「将来災厄をもたらす者」として美しき世界最大の賞金首となっていた。
当時は意味不明だったが、その後のかの息子が魔術師として魔術を極めたことから予想されていたことだろう。
しかもまだこの街が美しき世界に属していた時代にすでに店主の息子は魔族の特徴を見せていた。
ワケありの子であることは理解していたが、気立てよく店を手伝ったり子供の頃は本当に愛らしい子だった。
今でも皆に好かれる人物だが、強力かつ正確な呪文を自分たちに向けられたらと思うと背筋が寒くなる。
少なくとも彼を仲間に加えたことのあるトレジャーハンターならその恐ろしさは援護される側として体験済みだ。
0コメント