ヴが無くなった世界でヴの名を叫ぶ物語

あなたはバン・ヘイレンやボン・ジョビとカタカナ表記されることに耐えられますか?

第2話 長い旅の果てに

キミフコは雪原から近い廃村へと向かった。この村では「ヴ」の加護すら打ち消す強力なダイモンが未だに森に住んでいるという。

そのダイモンが疫病を引き起こし、村人は魔物と化すか変化に耐えきれず落命するかのどちらかだった。

この界隈に住んでいる獣人族はこの村の末裔だと言われている。なお、獣人族と「ヴ」の帝国との小競り合いは未だに続いている。

普通の者なら避ける旅路だが魔物となった自分には人通りのないこの旅路の方が気楽に思える。

それでも平地を歩くのに恐怖を感じて森づたいに移動する。

木々の相間から無数のダイモンの気配を感じ取る。不気味な森の中に村の廃墟を見つけた。

裏を返せばダイモンが巣食う廃墟なら自分が仮眠しているところを襲う者はいないと考えそこで休息を取る。

ダイモンの巣食う廃墟の不気味さが心地よい。すでにダイモンと同化して久しい自分と同調しているようだ。

今までの疲れが一気に押し寄せ、自分を深い眠りへと導いていく。目が覚めて何が起ころうがどうでもいい。所詮、自分は魔物なのだから……

どれほど廃墟で眠っていたか記憶にない。ただ、身体に刻まれた暗黒の神々のルーンが17個にまで増えている。

ダイモンの気配のあるところでうかつに眠るとこういうことになると知った時には手遅れだった。

ただし、自分には人間との半人半魔であるため擬態することは可能だ。ただし魔物としての姿はおぞましいものとなった。

闇の中でも完璧な視覚を与える瞳は自ら光を放って色を見定める。身体の外見こそあまり変化が見られないが骨格と筋肉はダイモンの好みに変えられた。内臓もおそらく同様だ。変に生命力が湧き出ている。

腰に違和感を感じている。何かを動かせる感覚がする。それをゆっくりと自分の身体に引き寄せる。

見た時には言葉を失った。自分の腰にはサソリそっくりの尻尾が生えていて自分の意思で武器として使えるようだ。

後日、一撃必殺の猛毒が先端の毒針にあることがわかった。なお、自分が仕留めた獲物を食しても毒の影響がないことか耐性も同時に得たようだ。

指先を見ると長く歪んだ鉤爪が電気を帯びている。後日、自分が相手の攻撃を受けた時、相手は感電して息絶えた。毒だけでなく電気まで身体を駆け巡っている。

頭が重いと思ったら立派な獣の角が生えている。これぐらいでもう驚かない。だが、舌が4m伸びて木を貫通した瞬間には自分自身が嫌になった。

筋肉は外見こそ以前と変わらないが段違いに強力になっている上に所々に棘状の鋭い突起が生えている。これは隠し武器として重宝する。

そしてこの森のダイモンたちと意思が通じ合っている。どうやら互いの思考を通じ会えるらしい。

一晩で完全な魔物の出来上がりである。

ここで授かった16の変異によって自分は旅先で暗黒語を学び、自分が得た武器と毒で狩りをしながら廃墟で宝と文献を探しつつ、無事に魔界の都でもある魔王の城へと数年かけてたどり着いた。

自分が他者に殺されない限り、自分の時は止まったまま周りの時間だけが過ぎていく。持て余した時間で「ヴ」についてたっぷりと調べる時間があったが、自分はこんなに賢かったのか?

頭の中身まで魔物になっていたことに気がついた瞬間のことである。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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