ヴが無くなった世界でヴの名を叫ぶ物語

「ヴ」をテーマにここまで妄想を巡らせる筆者の頭のネジが外れまくっています。

第3話 魔王の間で対決せずに意気投合する話

数年かけてキミフコは宝と書物を主なきチャリオットで引きずりながら城にやってきた。番兵たちが訝しげな表情で危険な雰囲気たっぷりの魔物を見据えている。

「ここは魔王の城だが……なにか用か?」相手のポールアームを握る手が震えている。確かに外見的には歓迎されなくて当然だ。

「魔物となったからこの国に来た。後ろの荷物は旅路で手に入れた土産だ。城ですぐに売り払って城内に家でも買おうかと思っている」流暢で訛りのない暗黒語でキミフコが番兵に答えた。

高度な知性の感じられる暗黒語だ。

「しばし待たれよ……」番兵が上官と話し込んでいる。

「王が興味を持たれているようだ、謁見に応じることを条件に城内へ入る許可を与えるとのことだ?」番兵をまとめる大隊長が兵士の代わりにキミフコに対応した。

番兵に比べると正確な発音の暗黒語だ。おそらく魔界の良家の出なのであろう。

大隊に荷物を預け、王の間へと案内される。そこで魔王と出会った時、王も負けず劣らず凶悪な魔物の姿をしていてホッとした。

「暗黒の神々に相当なまでに愛でられているようだ……」王が自分を見て笑みを浮かべた。

「生まれつきダイモンに支配されている……というより運命をともにしている。両親も含め他の誰よりダイモンとの付き合いが長い。いつの間にか闇に漂う他のダイモンたちとも心が通じ合うようにすらなっている」キミフコが皮肉交じりに語ったが、嘘偽りのない本音だ。

「古き時代の者たちは全てそうだった。ただ『ダイモンと運命を共にしている』という本質にたどり着く者は古き時代でもごく少数だった」王がキミフコに敬意を払い始めている。

「そう、この世界の全ての魂とダイモンとは永遠に縁を切ることができない、それは『ヴ』が地上にもたらされても変わってはいない」王がキミフコが旅の途中で得た事実と同じ結論を先回りした。

「自分の知識が正しければ『ヴ』自身もダイモンの1つだがその力が破格に強い。それが他のダイモンが他の生物の心身を支配できないほどに世界を制御している。その力が不足したら自分のように人間から魔物へと短時間に戻っていく。正解ですか?」キミフコが廃墟で漁った文献と数多のダイモンの思考を読んで手に入れた知識を暴露した。

「『ヴ』を見出すまで長き時を徘徊した自分たちより遥か短時間で正解にたどり着いたことは褒めて使わす」王がニコリと微笑んだ。

ただ魔王が「ヴ」を見つけた2000年前の英雄たちの一員だったのは初耳だ。これには驚きを隠せずにいた。

「自分は魔物としての生涯の間でのダイモンとの繋がりが強かった。だから縁を切れずこの世界に魔物のままでとどまっている。他の者達は全て地上に『ヴ』を持ち帰り、人間として定められた命を終えたと聞いている」魔王が当時の心境を語る。

「誰かが『ヴ』の価値と本質を記憶に留める必要があった。故に廃墟に数多の文献が残されていた。いつか人々は『ヴ』の価値を軽んじるようになる。魔王様自身の足を留めたのもその懸念では?」少し踏み込んだ質問をあえてキミフコが投げかける。

2000年後の地上ですでに暗黒の神々への崇拝が広まっていることを示唆する意味でもあった。

「……やはり予想通り人々は力を欲して元の姿へと戻ろうとしているのか」魔王の顔がキミフコを見据えている。魔王もまた人の思考を読み取る能力があるらしい。時々自分を先回りする。

「教えてもらおうか?最後に見た『ヴ』の世界の現況を……」魔王がキミフコに尋ねる。

キミフコは知りうる限りの全てを語り始めた。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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