Downfall The Empire of Tahjimar

ついにタイトルの人物登場です(笑)

第19話 暗黒の王子が語る帝国の弱点と顛末(その1)

「なんか……怖い……」アノマツの言葉にジーナが身震いしている。

「交わりの時に俺の身体からものすごい量を搾り取っていったんだ。こっちが怖かったよ」アノマツが笑っている。あの時感じた喜びは闇の力を味わうことを覚えたからなのだろう。

「そうなの……これからもちょうだい……」ジーナが笑っている。

翌日、カヘナシが笑いながら俺に声をかけてきた。

「上手いこと立ち回ったな。見事だ。考えるより経験とはよく言ったものだ。まさかお前が魔術師の痛いところを抉るように捕食するとは思いもしなかった」カヘナシは帝国に潜入している信者からもうすでにその混乱を知らされているようだ。

頭の中がその話で満たされている。

「レネゲードは暗黒の神々の保護下にない。力が全ての世界では後ろに背負った主人の強さが物を言う。傭兵団だって同じだ。強い傭兵団ほど高く雇われる。傭兵よりも強いバックがほしいなら正規軍に加わる。もっと強いバックが必要なら更に強い正規軍に加わる。それが力が全てでの世渡りだ。これさえ知っていれば個人の気まぐれとわがままは相当許されるものだ」アノマツが笑っている。

「そうだ。生まれながら力が全ての世界を生き抜いてきたから知りうる貴重な経験だ。残念ながら哀れな元聖職者の暗黒魔術師たちはそれを未だに理解していないらしい。眷属がお前を攻撃してくれると信じている。だが、暗黒の主神の庇護下にあるお前を襲う愚かな悪魔がどこにいる。レネゲードだって暗黒の神々を敵に回す無謀さは持ち合わせていないからな」カヘナシが変に自分を褒め称えている。

「祈りを捧げた全司祭が今日は気分爽快だ。弱点を見事に突いて裏切り者に歯ぎしりさせるお前は焦れた神々を喜ばせ笑わせた。レネゲードの弱みに付け込んでやりたい放題の使徒の出現に俺とお前のご主人様は満足している」カヘナシが今朝の祈りで起きたことを語った。

司祭は祈りで神の言葉を賜る時があるとされている。今日は全司祭が神々を侮った者の末路がいかに惨めなものかを伝えられた。

だが、恐ろしい啓示も受けた。帝国の主神である光の神の力を奪い、闇へと変えた司祭がいる。闇の神となった帝国の主神がレネゲードを配下に置くことを望めば多くのレネゲードが参集する。ただし光の世界しか知らない帝国の主神は闇に閉ざされ混乱し、暴走している。信者の狂気もその影響だ。

「それは神々がケジメをつけるべき問題だ。手下の俺や信者レベルができることはなにもない」アノマツが至極正論を吐く。

「俺達がすべきことはその司祭を仕留めることだ。帝国の主神が闇の力の使い方、レネゲードを配下に従える術を身につける前にな……」アノマツが結論を導き出す。戦いしか知らないが戦いを知り尽くした使徒の発言はあまりに的を得ている。

「その司祭の名はタジマール。帝国皇帝の座を奪い取り帝室を支援した世俗派を狩り続けている欲望と本能の塊だ。あれが聖職者だったなど信じられない」カヘナシがタジマールについて語る。

「そのタジマールの邪悪を見抜けなかったのは邪悪を遠ざけ消し続けた帝国軍のお偉いさんと聖職者たちの罪だ。俺たち異形を恐れて知ろうとすらしなかった。敵を知らずにただ追い詰め、遠ざけ、消し続けたら何も学べない。あの連中が異形の戦士の持っている実力をどの程度知っていた?知っていたのは最前線で使い捨てられた俺たち兵士だけだ。その兵士を捨て駒にし続けたツケはしっかりと払わせてもらう」アノマツの過去がカヘナシに入り込む。

アノマツは帝国軍に裏切られ捨てられた。だから暗黒の軍勢を背後に背負い帝国の敵となった。帝国の卑劣さは100年以上前から続いていた。使い捨てられた数多の兵士が絶命する直前に放った闇の力、それが世界を満たしている。その闇の力が帝国の卑劣さの象徴、タジマールに力を貸すだろうか?」カヘナシは考え込んでいた。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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