Dungeons & Badlanders Episode 3
題3話 波乱への序章
最初にして最も繁栄している交易都市イアドスから目的地の交易に到着しないとの知らせが保険組合の早馬便で保険組合イアドス本部に通告されたのは昨晩のことだった。
早馬便は危険地帯、廃墟を横断する街道ではなく新たに作られた迂回街道を疾走して駆けつけた。
早馬便のルートから廃墟内に迷い込んだのではないかと保険組合上層部は判断し、「バッドランダーズ」の捜索許可をイアドスの領主から取ることになった。
あの廃墟はイアドス騎兵の巡回範囲に含まれている、つまりイアドスの領土でもある。故にイアドス領主の許可が必要なのだ。
保険組合交渉担当でハーフエルフの吟遊詩人、クリント・タッサリオンは現在イアドス領主で魔族の戦士アクロン・エンバースと緊張感満点の交渉を行っている。
「いま騎兵が巡回しているからその結果を待て」アクロンが遠回しに「時期ではない」と口にした。
「騎兵の巡回結果次第ということですね、アクロン様」クリントは自分からカードを切らずにいた。
「キャラバンの死体などが見つかったら保険組合は保険金不払いが成り立つな。それで済ませればいい。掛け金の没収だけで手を引け」アクロンが最悪のカードを切った。
キャラバンの宝をアクロンの配下が回収すればイアドスの財産になる。だが、あまりに筋道が通った意見に反論の余地がない。
「キャラバンの死体や残骸などが発見されたからといって、他の街のバッドランダーズを送るなどとは考えるな」早馬便に他の都市からバッドランダーズを派遣する手段も絶たれた。
「手強い交渉相手に負けを認めます」クリントは遠回しにアクロンの指示に従うことを告げた。
「いろいろと心配なのは理解している。ここは非公式な場、パレス正面のバーだ。ゴブリンビールを奢ろう。注文無しで返してくれる店主でもないしな……」アクロンがバーテンダーにビール2灰を注文した。
ゴブリンビールは独特の醸造法で作られる地下迷宮の傑作で、コブリンヤオークの栄養源でもあり食事の代わりにもなる。
互いに緊張感から全く酔えない。胃の痛みが収まったのと空腹が満たされただけにすぎない。
アクロンもクリントもこの地域とあの廃墟には熟知している。
あの廃墟に住み着いている勢力はいないはずなのだ……
その頃、魔族の戦士セヴェリアン率いるイアドス騎兵の中でも最精鋭であるアクロン直属の騎兵5人が廃墟の巡回を始めた。
日常任務のはずが今日はなにか様子が違う。かすかに漂う血の匂い、そして破壊された馬車の破片の周りにはおびただしい血痕が残されている。
だが5人で入念に探しても廃墟から遺体は見つからなかった。
「任務は完了した。すぐにイアドスに戻ろう」命令は実行するが自分の見の安全を最優先する背ヴェリアスらしい判断だ。
セヴェリアスと他の騎兵たちは廃墟の不気味な様子に恐怖しながらイアドスへと逃げ帰った。
↓キャラクター作画はこちらで行いました(ステマ)
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