Downfall The Daylights pt.1.5
「目が覚めたか敵将よ」そこには自分とほぼ互角の端正な顔立ちの男が立っている。
ただし若干病的であることが気にはなる。
なお、アダールが顔を隠すことにこだわるのはその男女見境なく惹きつけてしまう端正な顔が騒動の種となるためである。
むろん、肌がやたらときめ細かいので服を脱がされるだけで精神的な混乱さえ引き起こす。それがナルシズムでないのだから不幸の極みとはまさにこれ。
「何日寝ていたかは知らないが……全ての傷が癒えている。治療してくれたなら感謝する」アダールが眠い目をこすりながら言った。日差しがないだけでこうも目覚めが悪いとは……
「治療?何もしていない。この地の闇の力が貴官の傷を全て癒やした」病的な顔の男が告げた。
「闇の力が俺を癒やす……どういう意味ですか?」アダールは読み書きこそなんとかできるがそれだけの情報で全てを理解できるほどの賢明さは持ち合わせていない。
「ヴァンパイアと戦い少しでも生命力を失った者は闇の力に束縛される。死んだところで生者が流した血に比例して少なくとも数日後には復活する」病的な顔の男が語った。
アダールの頭が混乱する。自分の身に前代未聞のトラブルが発生したことだけは理解できる。
「我が名はアダール。王国の海兵将軍だ貴官の名前を伺いたい」アダールは先方の名前だけは聞き出しておくべきと判断した。これからは長い付き合いになりそうだ。
「ハジだ。500年前から闇に束縛されし者……」病的な顔の男が語る。
(500年……悪くはない展開じゃないか!)アダールの心にふつふつとさらなる闇が広がっていった。
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