Downfall The Daylights pt.20

天然無能「タコ・ライス」が送る極悪ダークファンタジーラノベです。

「魔法大全の第一巻の閲覧許可をお願いする!」王都の魔術師ギルドに駆け込むなりサトケンが叫んだ。

「突然どうした、サトケン殿。だれか毒キノコでも喰らったか?」ギルドマスターには再三お世話にはなっているが今回は理由を説明している余裕がない。

「そういう問題じゃない。さっきマスターも倒れたでしょ?」サトケンがギルドマスターに尋ねると、無言で首を頷けた。

「その理由を確認したい。おそらく魔法大全第一巻の序文に手がかりがあるはず……」サトケンが指す魔法大全とは2000年前に大魔術師マーリンが記した全魔法を網羅する古典である。

それを17歳には読破していたのが、筆記試験については最低点が98点という奇跡と言えるスコアーを稼ぎ出していたサトケンらしい話である。

もっとも本人は17歳で実地試験を残して卒業資格さえ取っていた。

問題は魔法の素質の欠如。それを補うために一年間を残して筆記試験を全部合格していたのだ。

当然魔法の基本書である魔法大全は全巻読破している。17歳の学生に読める書物ではないが結論として「魔法の素質のある者の著書は魔法の素質の獲得法を書くことはできなかった」という点にたどり着く。

で、結局試験前に万策尽きて3番めと4番めに魔力の強いポーションの原液を2本一気飲みするという自爆行為に出てしまう。

その後の騒動は言わずもがなだが結局試験には落ちている。1科目でもスコアーが50を下回れば強制退学という校則通りサトケンは魔法学校を中退する。

なお、1つ下にはもっと壮絶なトラブルを起こして中退させられた伝説の生徒が存在する。

ただし、ギルドマスターでも解釈に困る書物の解読については抜きん出た才能があるためギルドの図書館には出入り自由の身である。

サトケンは永続光のランプの下で魔法大全第一巻序文を熟読する。

「あまりいい写本ではないな……本当は聖王国国立図書館にある第3写本レベルの物を読みたいのだが……」そう思いながら写本過程でのミスや脱落などを想定して羊皮紙に序文を書き写す。

序文の名は「2千年後の君たちへ」となっている。魔術師の心得を書いた文であるが、やがて闇の帝王が誕生し、闇の力が支配する1000年間を予言していることでもこの序文は知られている。

特に闇の帝王の誕生の7つのしるしについての記述は解釈が何通りもあり、毎回世界的危機のたびに皆が論じる話題である。

それをサトケンがもう一度読み直して現在の状況と冷静に対比して分析している最中である。

こういう作業は他人に鑑賞されるより一人で考えたほうが雑音がなくて作業が捗るものである。

魔法の素質を持つ全ての者が体調を崩したというところで闇の帝王が誕生した。その発生位置が何処かは推測し難いが、この予言に記述されている闇の帝王を倒すことはほぼ不可能……」絶望的な結論だ。

だが、自分の魔法の素質のなさよりまだ救いようがあるとさっさと頭は切り替わっているあたりサトケンの人生挫折経験の深さが見て取れる。

「戦いの回避、もしくはこちらの陣営に向こうを巻き込む。さもなければ口説き落とすか言いくるめる。正攻法はまず無理だな……」さっさと無理を認めて次善策を講じている。

「戦う方法も一応考える……あの1つ下のトラブルメーカーと他者憑依の杖で15分間だけ切り抜ける。ただ、あのトラブルメーカーは魔法の素質が制御不可能だから呪文失敗は許されない」最悪の事態の対処法もなんとか思いついた。

「結論は出たから本を片付けて、宿屋に帰って寝る。頭使いすぎて痛くなってきた……」なんと48時間も図書館にこもって考えていたらしい。

「よお、なにか答えはでたか?」ギルドマスターがもともと血色の良くないサトケンが更にやつれているのを気にかける。

「ああ、策は講じたが確実性は期待薄。と、いうわけで適当に腹ごしらえしてから寝る」サトケンはそう言い残すと自分が誘拐させたとされているこの都市のピザ屋でピザを食べているところで国王から呼び出しを受ける。

「あと5枚ピザが残っているし、ズンダドリンクもまだ半分しか飲んでない。あと48時間寝てないから5時間は寝かせてくれ。と、いうわけで7時間後に王のもとに出向く。宿はここだ」伝令にメモを手渡すと再びピザを食べるサトケンである。

サトケンが宿につくとザトが心配げにサトケンを見つめている。明らかに相当な大食いをしたらしい。しかもピザだとわかるほどの大食いである。

「これ、目を通しておいて。で、5時間寝る。そうすると王の使いが来るはずだから起こしてくれ」そう言い残すとさっさと部屋にこもって着替えもせずにベッドの転がって寝入っている。

ザトでもわかる丁寧な現代文で「2千年後の君たちへ」とその解釈が書き込まれた羊皮紙を読む。

「これ、まさか第1版で読んだ?」相当な補足がされているらしく、オカルトレベルの書物よりも遥かに単純明快かつ、詳細な解釈が書かれている。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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