ヴが無くなった世界でヴの名を叫ぶ物語

まだThe Elder Scroll IV:OblivionかD&D onlineで悩んでます。

第8話 狂気の軍神に全てを捧げた聖騎士に起きた悲劇

アスケスはその破格の戦闘力から近衛隊の一員として500年以上も激しい訓練に身を投じている。アスケスは一見危険極まりない姿をしているが、その容姿はじっくり見つめると同性さえ変な気を起こすほどに整っている。

特に暗黒の神々が与えた情熱的な漆黒の髪と瞳、凛とした眉の組み合わせが中性的なのが奇妙な魅力を醸し出している。

その頃、アスケスが魔界に来る元凶となった「偉大なる白い王国」の聖騎士であるメハリヒには人には言えない秘密があった。

メハリヒがまだ一介の武装巡礼団の兵士であった時のことである。武装巡礼団は狂気の軍神の信徒からなる、恐れ知らずの獰猛にして残酷な部隊で知られている。

その武装巡礼団の団員の中から優秀な人材が選抜され、亡者を屠るための厳しい訓練を受けて叙任するのが聖騎士である。

武装巡礼団も聖騎士も狂気の軍神の剣として亡者と戦って落命しても、軍神の御下へ召されると信じている。

それが戦う意志の裏付けとなってもいる。

しかし武装巡礼団の兵士メハリヒは目の前で憧れの存在である聖騎士が亡者に取り囲まれ絶叫の末に絶命する瞬間を見て立ちすくんでしまった。そして将軍の指示に従い、敗走した。

メハリヒは聖騎士に殉じず敗走した自分を恥じて聖騎士への厳しい道を選んだ。

亡者を屠るための厳しい訓練を経て、聖騎士として認められる存在にまでなったメハリヒが剣を交えた相手が誰であるかを知った時、メハリヒの信念が完全崩壊した。

剣を交えた相手は悪霊に心身を支配され、ヴァンパイアの墓所を守る墓守となったあの聖騎士の変わり果てた姿であった。

輝きをなくした兜の内側で赤い眼光がうつろに自分を見据えている。鎧の隙間からは青白くところどころ紫のシミがある生気のない肌が見えている。

「自分の手で屠らねば……」メハリヒはかつての憧れを含む墓守の中隊を1人で全て消し去った。

亡者は自分の中に恐怖が発生すると亡霊の支配が及ばなくなり、その場で急激に崩壊する。

メハリヒが手を下したのは中隊の半分にも満たない数だった。後は恐怖で自己崩壊して消えたのだ。

亡者の自己崩壊は皮膚が炎に覆われることから始まる。そして1分以内に防具と武器も含め全てが燃え尽きて灰の山となって崩れ落ちる。

狂気の軍神は自分を御下には導いてくれないという信仰の崩壊と亡者が崩壊していく様子の恐怖がメハリヒを戦いから遠ざけた。

メハリヒは亡者となることを恐れていた。それを回避するなら人外になっても構わない。メハリヒの覚悟が彼の足を旧帝国領に散在する暗黒の神々を崇め続けている神殿へと向かわせた。

メハリヒは全てを暗黒神の司祭に告白した。そして亡者になる前にダイモンに心身を捧げる契約を結んだ。

目を開いたまま心臓の真上に烙印を押される苦痛で叫び声を上げる。この苦痛は自分をダイモンが支配するまで続く。ダイモンが宿るとともに焼きごての温度が急激に下がる。

「この烙印が光を帯びた時、暗黒の神々が汝を魔物へと変えていく。だが、信徒となった今から汝の意思と肉体を支配しているのは汝の守護霊たるダイモンであって汝自身のの魂ではない」暗黒の神々の司祭がメハリヒに告げた。

「ダイモンは亡霊から信徒を守ってくださるのですか?」メハリヒが司祭に尋ねる。

「汝が死の危機に瀕した時、ダイモンは必ず力を授けてくださる。それは汝が暗黒の神々が望んだ姿の魔物となることを意味する」司祭が冷笑しながらメハリヒに告げる。

だが、メハリヒはダイモンと暗黒の神々の加護を受けることで戦列に復帰する自信を取り戻した。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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