Downfall The Empire of Tahjimar
あの名曲がとんでもない物語に……(Bon Joviファンのすることじゃないと思うけど……)
第7話 Livin'on A Prayer(その1)
帝国の宗教派が支配するネクエンの城の治安は極めて悪い。アノマツが立ち寄った帝国宗教派の城は暗黒の軍勢が支配する城より遥かに危険で物騒な場所だ。敵意には常に気を払っている。
後ろに暗黒の軍勢から賜ったバスタードソードを背負ってなければとっくに身ぐるみ剥がれていただろう。
大きな武器を背負った用心棒を襲う未熟者はいない。旅で得た教訓だ。
ここまでたどり着くまでに数多の女性を弄ぶも最後の段階で相手は急激に変異して自分は脱兎のごとく逃げ出した。
そのうち売春宿に入る前に城からの脱出ルートを確認しておく癖がついた。
後日、別の城で「あの城で強力な魔物が現れて大惨事だったらしい」との噂を耳にする。自分だって好きで魔物を大量生産しているわけではない。交わって相手が無事ならその女をさらって安全な場所で落ち着いて子種を仕込めばいい。
アノマツはネクエンの城の地下神殿に接触し、この街での女の買い方を尋ねた後、魔物が現れたら逃げろとだけ告げた。
相手の司祭も概ね自分の正体には気付いているようだ。
その頃、街の夜警のジョニーは一年以上も続いているストライキで彼女のジーナのヒモとして暮らしていた。
ジーナは街の酒場で働いていたが、ジョニーがユニオンの活動費が足りないからもっと稼いで欲しいと身体を殴る蹴るして要求した。
やむなくジーナはマッチ売りに転職した。マッチ売り、すなわち身体を売る仕事だ。
マッチを買った時点で彼女を買ったことになる。行為を終えたらマッチを彼女に返す。それがルールだ。
ジーナはもう絶望のどん底にいた。身体を売る仕事は好きではない。客は皆、自己満足してマッチを返す。
家に帰ればジョニーが稼ぎを全額力づくで奪い去る。
彼女の心の中に殺意が芽生えるのに時間はそうかからなかった。ヒモのジョニーも客もユニオンもみんな消えてしまえばいい。そう願い続けながら彼女は今夜もマッチを売っている。
その頃アノマツはマッチ売りを探していた。マッチ売りの中から機嫌の一番悪いのを買うことに決めている。そういう女は自暴自棄になっているか絶望しきっている。
運が良ければ防御本能が働かないかもしれない。
「マッチを売ってくれないか?」アノマツはジーナに声をかけ、代金を支払った。この代金は途中で襲いかかってきた追い剥ぎを皆殺しにして手に入れた軍資金だ。30人の追い剥ぎを悪魔の姿にならなくても簡単に屠れるのがアノマツという戦士である。
「帝国の脱営兵か……」追い剥ぎの懐の財布から所持金をかき集めて旅費にする。
その血塗られた金貨でジーナを買った。この出会いがジーナの願いを叶えることになるとはジーナさえ思いもしていなかった。
仕事ができるだけ早く終わればいいと思っているジーナだったがいざ仕事が始まると逆にこの心地よい時間が終わらないで欲しいと思うほどの快楽を与えられることになる。
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