Downfall The Empire of Tahjimar

U20WC2019個人的強制終了のおしらせではありません。

第22話 悪魔を取り込んだ少年の恐怖

「いい子だ。これが悪魔の力だ……」アノマツは石の壁を幾度か触ると拳を握りしめ全力でそれを殴った。石が割れ、2人が脱出するほどの穴が空いている。

「拳が寒風に吹かれている。一発で貫通するとは……上出来だ」アノマツが傷一つ無い拳を壁に穿たれた大穴から引き出した。

「す、すごい……」少年がそれを見つめているとアノマツが少年を穴から投げ捨てた。少年の悲鳴が城の真横の谷底から聞こえてくる。

「……大丈夫そうだな」アノマツは谷の向こうへと飛び去った。しばらくすると少年が黒い翼を開いて上昇してきた。

その顔は怒りの表情を浮かべている。

「な、何考えているんですか!地面に激突したらどうするんですか!」少年が飛行しながら怒りの言葉を撒き散らす。

「死なないが、痛いだろうな」アノマツが表情も変えずに答えた。

「死なないって……」少年が衝撃を受けている。

「お前はもうすでに悪魔の列に加わった。その時からお前は自然の死とは無縁になっている。死にたければ他人の武器に貫かれろ」アノマツが残酷な事実を告げる。

「そ、そんな……こんなところで言われる話じゃない!」少年はかなり混乱している。

「……黙って俺について来い。どうせ闇の中でも目が見える。そんなところだろう」アノマツはそう言うと速度を少年の不慣れなペースに合わせて飛行する。

少年の羽ばたきが背後から自分を追ってきているのが聞こえてくる。アノマツは徐々に速度を上げていった。

聖地にたどり着くとアノマツはなれた様子で着地した。少年もそれを真似て着地したが、その瞬間に疲れで身動きが取れなくなった。

「せ、背中が痛い……」少年がうつ伏せにひっくり返っている。

「距離が長すぎたな……ただ地上に降りたら確実に魔物に取り囲まれる。あの周りは『暗黒の魂』にすらなれなかった無数の無意味な肉の塊が餌食を求めて這いずり回る最も危険な場所だ」アノマツが少年の黒髪を撫でながら告げた。

「見たことがあります……あれがたくさん?!」少年が驚いて背中をビクつかせている。

「そのとおり。『暗黒の魂』が1に対して9はあの肉の塊になる。悪魔の持つ闇の力に耐えられる肉体の持ち主はそれほど数少ない存在だ。憑依された側が捕食するなど聞いたことすらない」アノマツが暗黒界の常識論を語る。

「聞いたことない……って、じゃああなたは何者なんですか?」少年が怯えながら尋ねる。

「俺は暗黒の神々の世界で100年かけて悪魔に変じた者だ。普通は1000年かかるが偶然持ち合わせた素質が100年での変化を可能にした。それでも例外中の例外だ」アノマツが出自を語ると少年が歯をガタつかせる。

「僕は……たったの7日間だったんです……心地よい夢を見ただけだ……」少年が憑依の感想を率直に述べる。

「闇の力に抗う本能を持ち合わせない者だけがそうなる。闇の力もその他の力と同様に身体を満たせば脳みそまで心地よくさせる。そうなる理由は闇の力がごく身近に存在していて普通の存在だと思いこむほどの絶望的環境の所業だ」アノマツがジーナから学んだことを少年に告げる。

少年は変に納得した表情を見せていた。

Gangbear's Light Novels

スピン・オフと言えば聞こえがいいが2次創作のラノベだからな!

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