Downfall The Empire of Tahjimar
残酷にして甘美な運命を背負いし者たちの背筋ZOZOTOWNな世界
第24話 少年の身体に刻まれた恐怖そしてその運命
「帝室の傍系……なら囚われる理由としては十分だ」アノマツが腕を組んでキケオムを見据えている。
「ええ……でも自分がなぜ生き延びられたがわからないままこういうことになってしまったようです」キケオムも理解できない理由で生き延びられたようだ。
「お前に起きたこと全てを話せ。それが生き延びた理由なのかもしれない……」アノマツが残酷な要求をする。
「はい……父とその配下の兵士に起こされて、自分は戦いの輪に加わりました。敵は世俗派のアジトでもあった父の邸宅を襲撃しました……そして自分以外の全ての男が囚われて『束縛する神の申し子』を身体に埋め込まれました……」キケオムが震えながらその光景を思い出し口にする。
「その申し子を食ってきたからその先を話す必要はない。あの暗黒魔術師の中に宿った申し子は恐怖と狂気だけを持つ濃厚にして純度の高い闇の力の塊。最高級のご馳走だ……」アノマツが自分の唇を舌先で舐め取った。
「じゃあ先程の闇の力は?!」キケオムが脱力して崩れ落ちる。
「そうだ。お前を心地よくさせた闇の力は俺が申し子たちから吸収したものだ」アノマツが更にキケオムを恐怖へと追い込む。
「それで心地よくなる身体になるだけの理由を吐き出してもらおうか?」アノマツが暗黒の王子であることを思い出させられた。
「申し子を全ての男たちに植え付ける前に申し子の姿に変わった敵は母を眼の前で生きたまま喰い始めました……同時に数体が手足から苦痛で絶叫する母を食い尽くした……」キケオムの唇が恐怖で震えている。
「そして僕は人間の姿に変じた男たちに後ろに何度も入れられて……その度に痛さに叫びを上げていた」キケオムの震えが止まらない。だがその震えの質が変わっている。
「そのうち痛みが気持ちいいなにかに変わった……もっと欲しくて母を食った者たちにさらなる責めを求めてさえいた……」キケオムが自分自身に対して恐怖し震えている。
「感じるところを責められたら誰でも心地よくなりそれを求める。例外はない」アノマツがキケオムに事実を伝えた。
「誰でもが……ですか?!」キケオムが眼を見開いている。
「特に思春期は感じることを覚えたらそれに没頭してしまう時期だ。その年頃にこの体験をした。だからお前はその気持ちよさを求めつづけた……だから悪魔を吸収しても生き続けられた」アノマツがわかりやすく恐ろしい真実を告げた。
「自分の中の悪魔は更にそれを求めている……怖い……」キケオムが素直に恐怖の理由を口にした。
「お互いの求めるものも一致していたのか……永遠に快楽を渇望し続ける運命に絶望するか?幸運を手にしたと開き直れるか?後者を選べばお前は永遠に生き続けられる」アノマツがその後の2択を促した。
「永遠に快楽を渇望する……辛くはない……永遠にそれを負い続けられるのなら……最高です……」キケオムが本音を口にした。
「生存本能の強い証拠だ……徐々にお前の身体は変化する。絶頂に達するごとに常人には感じられない芳香を放ち始め、無意識に人を魅了し、求めた快楽を得てさらなる絶頂を知る。その繰り返しがお前を待っている世界だ。その世界を選べなかった者にとっては羨望の対象だ。俺は羨望する側だ……」カヘナシがキケオムの瞳を見つめている。
「生き続けてみたいと思いました……」キケオムが淫魔の笑みを浮かべた。
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